2024年6月1日土曜日

白鳳地震 684


《壬辰(十四日)に、人定(午後十時ごろ)になって大きな地震がおこり、国中の男女が叫びあい、逃げまどった。山は崩れ、川はわきかえり、諸国の国郡の庁舎、百姓の家屋や倉庫、寺院・神社の破壊されたものは数知れず、人民や家畜も多く死傷した。このとき、伊予湯泉(道後温泉)が埋もれて出なくなり、土左国では田五十余万頃(約一二〇〇ヘクタール)が海に没した。
古老は、 「このような地震は、かつてなかったことだ」  
と言った。この日の夕、鼓の鳴るような音が東の方角に聞こえた。
 「伊豆嶋(伊豆大島か)の西と北の二面がひとりでに三百丈あまり広がり、もう一つの島になりました。鼓のような音がしたのは、神がこの島をお造りになる響きだったのです」 と言う人があった。甲午(十六日)に、王卿たちに禄物を賜わった。》『日本書紀』中公文庫より

文章前半で被害があったはずの阿波徳島の地名を意識的に隠している。当時阿波が首都だった証拠である。

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