邪馬台国阿波説に熱視線
映画公開や集会 地域活性化狙う
ツアー企画 県も後押し
「邪馬台国は徳島にあった」とする「邪馬台国阿波説」に着目した地域活性化への取り組みが進んでいる。県内の郷土史家らが神話や出土品の分析を通じて主張している新説だが、昨年頃から興味を持った多くの歴史系ユーチューバーが取り上げ始めた。現地ツアーなどで観光客を呼び込もうとする動きも出てきており、県も後押ししている。(北野浩暉)
邪馬台国は、中国の正史「三国志」の一部である「魏志倭人伝」に登場。内戦の末、約30の国々が女王・卑弥呼を共立して政治連合体を結んだとされる。江戸時代以降、その所在地について「畿内(近畿)説」と「九州説」を中心に論争が繰り広げられてきており、「古代史最大の謎」となっている。
「阿波説」は1970年代、県内の郷土史家らが遺跡や魏志倭人伝の分析などから本を出版して以後、史家らが団体をつくるなどして、イベントや勉強会を続けてきた。
有力2説に対し、阿波説では、魏志倭人伝に記された朝鮮半島から邪馬台国までの距離や行程を分析すると、徳島に行き着くと主張。畿内説や九州説は距離の単位や方角の解釈が誤っているとする一方、県内の神社や遺跡などには、記述と一致する特徴が多々あるとしている。
例えば、阿南市の国史跡・若杉山遺跡では、赤色顔料「朱」の原料となる鉱物「
阿波説を盛り上げようと、徳島商工会議所青年部は、女子高生が卑弥呼と徳島の関係などについて探るストーリーを描いた映画「少女H」を製作。昨年、県内や東京都で上映後、今年5月に動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開すると約9万回再生された。ほかにも、歴史や都市伝説を扱うユーチューバーが相次いで阿波説について紹介している。
同青年部で製作に携わった徳島市の保険代理店経営、山本高弘さん(49)は「こんなに面白い話はなく、県外の人からも関心が強い。剣山にユダヤの秘宝が眠るとされる伝説なども含め、県内の古代史に関する逸話を整理してさらに広めたい」と語る。
今月10日には、歴史を通じた街おこしに取り組むNPO法人「吉野川に生きる会」(島勝伸一理事長)が、徳島市の県青少年センターで、阿波説について考える集会を開いた。
郷土史家の島勝理事長や愛媛大学の越智正昭・客員教授らが、出土品や地質学、気候などの観点から阿波説について解説。島勝理事長は「阿波説は論理的に実証できていると思うし、県民にとって誇りにもつながる」と力を込める。
これらの動きを受け、読売旅行は来年3月、郷土史家を講師とし、阿波説にまつわる神社などの歴史スポットを巡る1泊2日のツアーを計画。今月1日、貞広貴志社長らが県庁に後藤田知事を訪ね、協力を呼びかけた。
県としても観光施策に取り入れていく方針で、後藤田知事は「阿波説は徳島の観光にとって伸びしろの一つ。今後他の説と対決させるなど、いろんな形でブラッシュアップさせていきたい」と述べた。
0 件のコメント:
コメントを投稿