2026年2月11日水曜日

大野晋『日本語はどこからきたのか』中公文庫99頁



大野晋『日本語はどこからきたのか』中公文庫99頁

意味 日本語   タミル語 意味
粟  af-a     av-ai  臼で打つ・棒で打つ
《       タミル語  日本語
棒で打つ・臼でうつ av-ai →af-a 粟
つまり、 タミル語では動作として表現することばを日本語では、その動作によって生じるものとしてとらえたのです。》
(同102頁)

棒で打つ・臼でうつ av-ai →af-a 粟
つまり、 タミル語では動作として表現することばを日本語では、その動作によって生じるものとしてとらえたのです。

102頁

99四 タミル語に出会う
表10 f ~v の対応
意味
日本語
タミル語
意味
① 箸
fas-i
vat-i
小さい棒
ぼう
するど
② 針
far-i
vāl
鋭いきっさき
③吐く
fak-u
vākk-u
吐く
④ 生ゆ・栄ゆ fay-u
vay
栄える・成長する
⑤ 端・刃・ 言葉 fa
vay
端刃・言葉・ロ
⑥ 梁
far-i
vār-ai
てんぷく
⑦ 覆る
kaf-eru
kav-ir
転覆する
うす
⑧ 粟
af-a
av-ai
臼で打つ・棒で打つ
ひあい
⑨ 哀れ
af-are
av-alam
悲哀

71
タミル語に出会う
21
それは日本人の注意をひきませんでした。日本人はチベット語までは注意しました
チベット語の南には、インド・ヨーロッパ語の仲間であるサンスクリット語の子
孫のヒンドゥ語などが広く使われているので、チベット語までで研究を打ちきってし
まい、南インドまでは手をのばさなかったのです。
すすむ
一九七〇年になって、芝烝氏がドラヴィダ語に目をむけ、日本語との関係につい
て発表しはじめました。
しゅう
芝氏は宗教学の研究をしていたのですが、日本の古代宗教に使われているいくつ
かのことばの由来が、アジア大陸の北方からきたのではないかと思い、北方の諸言語
―それはアルタイ語です――に目をむけたのですが、思わしい結果がえられません
でした。そこで南方になにかないかと、南に注目したのです。
そのすこしまえ、一九六〇年に、イギリスのオックスフォード大学のバロウ教授と、
アメリカのカリフォルニア大学のエメノー教授とが協力して、南インドのドラヴィダ
語の比較辞典を出版していました。
ッドラ
テルグ語・
ダ語とい
ンナダ語
0
ミル語
0
マラヤラム語を
南インドのドラヴィ ダ語とは、
そのなかに大きな四つの言語
この四つの大
区別しています。そして合計一億三〇〇〇万人のひとが話しています。
言語は、それぞれちがう文字体系をもっていて、文法も単語もちがっています。です
からそれら全体にわたって研究することは、とてもたいへんで、その研究は近づきが
たいものでした。
ところが、バロウとエメノーのふたりの学者は、少人数で話している方言もふくめ
て、一八のドラヴィダ語の単語の基本形をひとまとめにした、使いやすい辞典 『
Dravidian Etymological Dictionary』(一九六一年刊)を出版したのです。この本は単語
をローマ字であらわして、英語で説明が書いてあります。 とても読みやすい辞典で、
しかも、各方言のかたちや意味がひと目で比較できるので、ドラヴィダ語の言語学は
とりつきやすくなりました。

102
も、なんでも日本語では名詞で取り入れます。それがタミル語との関係では、穀物の
ことばに特にめだつのです。
そな
タミル語
日本語
臼のなかで打つ
kuma (神に供える米)
いしう
石臼でひく、つく
kum-ai
ar-ai
nukk-u→
ar-e 米粉
もみがらをとる
nuk-a


棒で打つ・臼でうつ av-ai →af-a 粟
つまり、 タミル語では動作として表現することばを日本語では、その動作によって

生じるものとしてとらえたのです。そこで右のようなことがある。このように考えれ
ば、⑧は理解できるでしょう。万を装しょう
SULU ar
なっています。
あわ
⑨の日本語は、現代でもつかう「哀れ」です。
かんどう
私はアハレということばは、感動詞の「ア」と「ハレ」とが結合してつくられたこ
とばだと思っていました。ところが、タミル語をしらべていくと、 av-alam という
名詞があって、つぎの説明がついています。
びんぼう
suffering(苦しみ) pain (痛み) poverty (貧乏) weeping (泣くこと) sor-
した
(詩では、哀愁にみちた情趣)
このさいごの pathetic sentiment という説明は、まさに日本語のアハレの説明に
表10に数多く例をあげたように、 タミル語のVは日本語のハ行の子音と対応しま
すから、日本語の af-are は、 タミル語のav-alam とまさしく対応することを否定
lamと対応してい

大野晋『日本語はどこからきたのか』中公文庫99頁

大野晋『日本語はどこからきたのか』中公文庫99頁 意味 日本語   タミル語 意味 粟  af-a     av-ai  臼で打つ・棒で打つ 《       タミル語  日本語 棒で打つ・臼でうつ av-ai →af-a 粟 つまり、 ...