黒焦げの巻物を解読、プラトン埋葬場所の詳細判明か 最後の夜の様子も
Barbie Latza Nadeau, CNN
(CNN) 古典古代の巻物の文章を新たに解読した結果、ギリシャの哲学者プラトンの埋葬場所や、死の床で奏でられていた音楽に対するプラトンの感慨が判明した可能性がある――。イタリアの研究チームがそんな調査結果を明らかにした。
このいわゆる「ヘルクラネウムの巻物」は紀元79年のベスビオ火山噴火後、灰に埋もれ黒焦げになったもので、今も専門家が人工知能(AI)その他の技術を駆使して調査を続けている。
伊ピサ大学文献学・文学・言語学学科のラツィアーノ・ラノッキア教授(パピルス学)によると、新たに判明したのは、プラトンがアテネの学園「アカデメイア」内に設けられた詩神の祭壇付近の秘密の庭に埋葬されたとみられる点。
これまでは学園内に埋葬されたということしか分かっておらず、具体的な場所は未確定だったという。ラノッキア氏が4月30日、CNNの取材に明かした。
プラトンの学園は紀元前86年、ローマの将軍スラによって破壊された。
巻物の文章はプラトンの最後の夜についても、これまで以上に詳細な情報を提供している。このとき演奏されていた音楽が好みに合わなかったようだ。
専門家が先週ナポリで行った発表によると、従来、トラキア出身の奴隷女性が奏でた「甘美な音色」はプラトンの耳に心地よく響いていたと考えられていた。
しかしラノッキア氏によると、巻物の文書を調べたところ、死の床で高熱が出ていたにもかかわらず、プラトンはフルートの演奏が「リズム感に乏しい」と苦言を呈していたことが判明した。これはメソポタミアから来た客人に語った言葉だという。
「プラトンは高熱を出していて、彼女たちの演奏する音楽に悩まされていた」(ラノッキア氏)
新たに解読された文書は、プラトンがソクラテス死後の紀元前399年、あるいはスパルタ人によるアイギナ島征服後の紀元前404年に奴隷として売られた状況についてさらなる光を当てるものでもある。これまで、プラトンはシチリア島滞在中の紀元前387年に売られ奴隷の身になったと考えられていた。
この文書を含む炭化した巻物およそ1800本は、ユリウス・カエサルの義父のものだったとみられる建物で18世紀に見つかった。カエサルの義父はポンペイから約20キロの距離にあった海辺の町、ヘルクラネウムに住んでいた。
専門家らはAIに光干渉断層計、赤外線ハイパースペクトル画像技術を駆使して、損壊したパピルスに隠された文章を読み解こうと試みている。
ラノッキア氏によると、今回の発見は文書全体の約3割を占める1000単語あまりの文章から得られたもの。過去1年にわたり繰り返し解読が試みられてきたという。ラノッキア氏は先月23日、ナポリ大学で調査結果を発表した。
今回の発見は欧州研究会議(ERC)から2021年に授与された250万ユーロ(約4億1500万円)規模の助成金で可能になった。
「ギリシャ学派プロジェクト」と呼ばれるこのプロジェクトは5年間の研究プログラムで、様々な技術や手法をもろいパピルスの解読に役立てようとするもの。
ギリシャ学派プロジェクトでパピルス関係の編集者を務めるキリアン・フライシャー氏はナポリでの発表で、「文書の増加はおおむね、中サイズのパピルスの断片が新たに10点見つかったことに対応している」と説明。「プラトンの学園やヘレニズム文学、ガダラのピロデモス、古典古代史一般に関する具体的な新事実に依拠して新たな読解が行われるケースが多い」と指摘した。
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