新装版 光りは東方より | 古史古伝・超古代史・異史 | 八幡書店
本書は「戸来村のキリストの墓」などを紹介し、超古代文明や神代文字などについても言及した山根菊子の著作である。しばらく品切れになっていたが、久しぶりに復刻することとした。かの青森県戸来村のキリストの墓の伝承形成に最も大きな役割を果たしたのが、何を隠そう本書であることはよく知られた事実である。もちろん周知のごとく「戸来村のキリストの墓」の発見そのものは、山根キクによるものではない。その発端は、本書刊行の2年前、昭和10年8月、竹内巨麿翁一行の戸来村探訪にまで遡るものである。しかし、昭和10年の巨麿翁の探訪は、門外不出とされる文献に基づく、一種秘密めいた調査行であり「伝説」としての定着には、山根キクによる詳細な現地調査と考証をおりまぜた本書の登場を待つ必要があったといえよう。
本書は昭和12年に発行されるや、ただちに発禁回収処分にされ、やむをえす改訂版が出されたが、その後入手は著しく困難となった。同じ改訂版でも、その後、昭和16年に2分冊で出版されたヴァージョンがある。このヴァージョンの「釈迦の巻」に関しては、初版よりも内容的に増補されている部分が約80頁ある。そこで当社では、初版発禁本を完全復刻すると同時に、なおかつ補遺として、この昭和16年ヴァージョンのうち、釈迦に関して増補された80頁を補遺として収録、さらに『天津祝詞ノ太祝詞事新解』と題する小篇をも付録とし、すべてに完壁を期した。
なお、本書は、戸来村キリスト伝説の原典としての知名度のため、たんにキリスト渡来のみを対象としたもののごとく思っている人も多いが、実際には「キリストの巻」「ヨセフの巻」「モーゼの巻」「釈迦の巻」の四部から構成され、青森戸来村のキリスト遺跡、大山阿夫利神社神域のヨセフの塚、能登宝達山麓に眠るモーゼの三つ子塚、従来ほとんど注目されることのなかった信州皆神山を中心とした聖域に存在する釈迦の塚など、日本各地の異境へのインスピレーションに満ちた現地調査と卓抜な考証の記録ともなっている。まさに日本列島に封印された上古の神々の記憶を遡上していく幽冥紀行の書であったともいえよう。超古代史・神代史に関心を持つ者ならば、書架に備えねばならない一冊として広くお勧めしたい。
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