源氏物語 鈴虫巻 冒頭
すゝむし
十五夜のゆふ(くれに仏のおまへ)
に宮おはしては(しちかくなかめ)
たまひつゝ念珠(そたまふわかき)
あまきみたち二(三人はなたてま)
つるとてならす(あかつきのおとみつ)
のけはひなとき(こゆさまかはりたる)
いとなみにいそき(あへるいとあはれな)
るにれいのわ(たりたまいてむしのね)
いとしけく(みたるるゆふへかなと
てわれもしのひやかに念珠したまふ)
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すずむし 巻頭
「十五夜の夕(暮れ時、仏前)
に女三宮がいらっしゃって、(端近にて)
物思いなさりつつ、経文(を読まれていた。)
若い尼君たち二(三人が、仏に花を奉)
ろうとして、鳴らす(閼伽杯の音、水)
の気配(などが聞こえている。)
出家したため、それまでとは様変わりした仏事の営みに
せわしない(のも趣き深い。)
そこへ、源氏がいつものようにお(渡りになって、『虫の声)
が、たいそう多く(乱れる夕べですね』
と仰って、自らもそっと念仏を唱えなさる。」)
この、「鈴虫巻」冒頭の文章が書かれているようです。
※(カッコ)書きは、その続きの部分です。
補いつつ訳してみますと、
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「十五夜の夕暮れ時、仏前に女三宮がいらっしゃって、
端近にて物思いなさりつつ、経文を読まれていた。
若い尼君たち二三人が、仏に花を奉ろうとして、
鳴らす閼伽杯の音、水の気配などが聞こえている。
出家したため、それまでとは様変わりした仏事の営みに
せわしないのも趣き深い。
そこへ、源氏がいつものようにお渡りになって、
『虫の声が、たいそう多く(乱れる夕べですね』
と仰って、自らもそっと念仏を唱えなさる。」)
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詞書の場面的には、出家した女三宮が念誦しているところ。
若い尼君たちとは、共に出家した女房たちでしょう。
源氏はそこへ渡って来て、鈴虫の声にあわれを誘われ、そっと念誦する・・・
冷泉院の出てくる場面とは、違いますね。
この後、源氏たちは連れ立って、冷泉院の御所へ赴き、宴を催すのですが・・・。
印刷されている男性二人は、源氏と冷泉院です。
絵巻自体は、冷泉院の御所にて、月の宴を催している場面。
詞書と絵巻の図柄が、合っておりません。
その上、お札をよくよく解読してみると、
詞書の下半分が、切れてしまっていますね。
印刷されている詞書は、下記のような文面かと思われます。
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すゝむし
十五夜のゆふ
に宮おはしては
たまひつゝ念珠
あまきみたち二
つるとてならす
のけはひなとき
いとなみにいそき
るにれいのわ
いとしけ
2千円札の鈴虫の絵
とうとう発行されましたね。「2000円札」
じっくり、お札の裏を眺めてみましょう。男性二人が向かって左に、右に紫式部がちょこりん。
そして・・・崩し字で書かれている詞書部分ですが、
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すゝむし
十五夜のゆふくれに仏のおまへ
に宮おはしてはしちかくなかめ
たまひつゝ念珠そたまふわかき
あまきみたち二三人はなたてま
つるとてならすあかつきのおとみつ
のけはひなときこゆさまかはりたる
いとなみにいそきあへるいとあはれな
るにれいのわたりたまいてむしのね
いとしけく(みたるるゆふへかなと
てわれもしのひやかに念珠したまふ)
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この、「鈴虫巻」冒頭の文章が書かれているようです。
※(カッコ)書きは、その続きの部分です。
補いつつ訳してみますと、
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「十五夜の夕暮れ時、仏前に女三宮がいらっしゃって、
端近にて物思いなさりつつ、経文を読まれていた。
若い尼君たち二三人が、仏に花を奉ろうとして、
鳴らす閼伽杯の音、水の気配などが聞こえている。
出家したため、それまでとは様変わりした仏事の営みに
せわしないのも趣き深い。
そこへ、源氏がいつものようにお渡りになって、
『虫の声が、たいそう多く(乱れる夕べですね』
と仰って、自らもそっと念仏を唱えなさる。」)
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詞書の場面的には、出家した女三宮が念誦しているところ。
若い尼君たちとは、共に出家した女房たちでしょう。
源氏はそこへ渡って来て、鈴虫の声にあわれを誘われ、そっと念誦する・・・
冷泉院の出てくる場面とは、違いますね。
この後、源氏たちは連れ立って、冷泉院の御所へ赴き、宴を催すのですが・・・。
印刷されている男性二人は、源氏と冷泉院です。
絵巻自体は、冷泉院の御所にて、月の宴を催している場面。
詞書と絵巻の図柄が、合っておりません。
その上、お札をよくよく解読してみると、
詞書の下半分が、切れてしまっていますね。
印刷されている詞書は、下記のような文面かと思われます。
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すゝむし
十五夜のゆふ
に宮おはしては
たまひつゝ念珠
あまきみたち二
つるとてならす
のけはひなとき
いとなみにいそき
るにれいのわ
いとしけく
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お札の印刷部分だけを読むと、まるで文意が通りませんね。
絵巻と詞書も合っていませんし、どうも中途半端な仕様となっているようです。
「源氏絵巻」には、鈴虫冒頭の場面を描いたものもあるのですが・・・
まぁ、何はともあれ、2000円札に「源氏物語」が採用されたのは嬉しいことです。
これを機会に、多くの方々が「源氏物語」に興味を抱いて下されば、何よりのことと思います。
鈴虫冒頭の詞書は、源氏絵巻でいうと「鈴虫一」に当たります。
これには、女三宮や若い尼さんが描かれてます。
お札の絵は、「鈴虫二」ですね・・・(五島美術館蔵)
向かって左側が冷泉院、右側の、背を向けてるのが源氏だと思われます。
絵巻の解説(『図説日本の古典7 源氏物語』集英社)を見ますと
「庭は一面に銀。置畳も爽やかな白緑を銀で縁どり、
上皇の御引直衣や源氏の縹の直衣など、これまた銀を主調とする。
まさに冴えた月光が画面にみなぎることを感じさせ、
この情景の秘められた悲劇性を象徴する。」
とあります。
「物語本文では参院する車の中で行なわれた奏楽を、
冷泉院の邸内でのこととして描くなど」
絵巻作者の創作が盛り込まれているそうです。 新2千円札
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