古くから行われる高野山での行事
春季胎蔵界結縁潅頂(しゅんきたいぞうかいけちえんかんじょう)
5月3日~5日に「胎蔵界結縁潅頂」、10月1日~3日に「金剛界結縁潅頂」を大伽藍・金堂にて開壇致しております。
この儀式は仏様の世界を表す曼荼羅(まんだら)に向かって華を投ずることにより、仏様(密教の尊い教え)と縁を結ばせて(これが《結縁》の意味)いただき、阿闍梨様から大日如来の智慧の水を頭の頂より注いで(これが《潅頂》のこと)いただくことによって皆さんの心の中に本来そなわっていらっしゃる仏の心と智慧を導き開く儀式です。高野山では先の「大曼荼羅供」とともに厳格な儀式の一つです。この尊い機縁に触れていただきまして、心豊かな生活を送られますことをお祈りいたします。
5月、10月共に初日には入壇に先立ちまして「庭儀結縁潅頂三昧耶戒」の儀式がございます。どうぞ密教のありがたい「戒律」をお授かりください。僧俗を問わずどなたでも金剛・胎蔵の諸仏と縁を結ぶことができます。受者は印と真言を面授され、そして両目を覆われます。印の先には花を授けられ曼荼羅へと導かれます。そして花を曼荼羅に投ずることによって曼荼羅の諸仏と「仏縁」を結びます。これを「投花得仏(とうけとくぶつ)」といいます。次に如来の智慧の水を阿闍梨様より注いでいただきます。そうすることによって煩悩の闇をさまよっている我々に道しるべを与えていただきます。この儀式は大変古くからあり、お大師さまが弘仁3年(812年)11月に京都の高雄山寺にて金剛界、続いて12月に胎蔵潅頂を厳修された記録がございます。
さて、金・胎の結縁潅頂の二つの違いについてお話しします。基本的には金剛界は金剛界の諸尊と、胎蔵界は胎蔵の諸尊と結縁することですが、もう少し見方を変えると、金剛界は金剛頂経(こんごうちょうぎょう)系思想を根本として、大日如来の智の表面を表現するとして、皆さんの菩提心と仏の智慧を示すのを目的とします。胎蔵(界)は大日経系思想を根本として皆さんが本来持っている菩提心・理性が大慈悲の万行によって長養される世界を体験します。このように説明すると「なんと難しいことか」と思われるでしょうが、最初に話を戻して金・胎の仏様と結縁し、皆さんの心に仏様の「ありがたさ」がなんともなしに沸き上がり、それを糸口として心に大慈悲が起こり、皆さん仲良く生きとし生けるものと共にこれからの生活を送りましょう。
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