2024年6月9日日曜日

聖徳太子の真実 | 大山 誠一 |本 | 通販 | Amazon

2019年6月18日に日本でレビュー済み
最近よくきく「聖徳太子はいなかった」説を1冊で済ませようと思ってこの本買ったら、大山氏 編の論文集だった。大山氏の論文ももちろん掲載されているが、「実は、スーパーマンは聖徳太子ではなく藤原不比等でした」話は、まだこの本では姿を現していない。

聖徳太子が厩戸王に死後つけられた名であることは昔から誰でも知っている。「同時に十人の話を聞いた」とか、後世の伝説が多いことも当然誰でも知っている。
日本書紀は前のほうはふつうの神話だし、中国に対して見栄をはる目的もある、古い天皇の寿命は長すぎる、など、一字一句が正確な歴史記述ではないことも誰でも知っている。
さらにいうと、大山氏も厩戸王の実在は疑っていない。

じゃ、大山一派は「聖徳太子はいなかった」で何が言いたいんだ?というと、厩戸王は、仏教受容、日本の国家形成に大きな貢献をしていない、ということだ。
だったらそういえばいいんだが、自分が大発見した、1000年以上の迷妄・学会のタブーを自分が正した、と勝手に思い込んでいる。

日本書記に書かれていることは簡単に信じられないといいつつ、維摩経、勝鬘経、法華経は太子の記事以外に書記に記載がないからこの当時知られていない「はず」、「だから」三経義疏は後世の「捏造」とする。
また、日本書紀の中の孝徳天皇が仏教史を振り返るところで蘇我氏の影響を書くのに、太子について何も記載していない。「したがって」厩戸王は日本の仏教受容に貢献はない、とする。

なんかすごい。
全編こんな調子で、聖徳太子関係の資料は全部後世に作られたもの、「したがって捏造」とする。

次は、「聖徳太子はいなかった」のに、偉大な聖徳太子という伝説があるのはおかしい、どこからでてきたのか?というもともとはどこにもなかった新たな疑問がでてくる。
それは実際に偉大な人間だったから、というもっとも当たり前の話は除外される。だって聖徳太子がいなかったことは「立証した」から。
で、道慈とかいう僧侶が、聖徳太子を「捏造した」とくる。

この本では、「道慈が最澄・空海にも比すべき偉大な僧侶」となっている。
この誰もしらない道慈の書いたものとして残っているのは、わずかに漢詩が二編あるだけだそうだ。
この漢詩が中国の文章のまるパクリをしているところと、日本書紀の仏教について記載されている部分に中国の文章をまるパクリしている部分があることから、日本書紀の仏教に関する部分は道慈が書いた、だから道慈は偉大だ、となる。

推古の同時代の隋書に「倭王が男性」と書かれているところと、「蘇我馬子の墓がでかい」ことから用明、崇峻、推古は大王ではなく馬子が大王だったことは「誰の目にもあきらか」とする。

「聖徳太子の実在を信じる人は日本書紀を盲目的に信じ込む信者」とか、自分たちの妄想をただす人たちへの防御線を張ることも怠りない。

かつて、ブッダも実在を疑われたことがある。仏典は全部、仏滅後に書かれたものだ。
しかし古い仏典に書いてある通りの場所から骨がでてきたので、今ではブッダの実在を疑う人はいない。
資料が後世のもの=実在しない、ではない。

日本に4~5世紀に文字が伝わってからさして経っていないのだから、聖徳太子の事跡が同時代の文書として残っていないのはむしろ当たり前のことだ。
隋書に、「倭王が男性」とあるのも、天皇が女性では中国からなめられると思って、中国の使者に馬子を天皇として会わせただけだろう。「日出づる処の天子云々」と併せて、隋書のこの記述はむしろ、しゃれっ気のある頭いい人が背後に実在したことの証拠になるくらいの話だ。

日本書紀に聖徳太子が偉大な人間と書かれているのはその通りだったからだろう。数々の伝説が生まれるのが当たり前なほど偉大だったのだ。
かわりに漢詩ふたつの道慈がスーパーマンでした、では、歴史ミステリーとしても説得力がない。

聖徳太子からまだ100年くらいしか経っていないのに、国家事業だった日本書記を思うように捏造することが可能で、しかも道慈らが聖徳太子を捏造したことに反対がなかった、わざわざ天皇でない厩戸王を理想の天皇像とした、そんな捏造を誰も彼もが信じ込み聖徳太子伝説がぼこぼこでてきた。

既に文章で記録するのが当たり前の時代になっていたのに、道慈らがスーパーマンだった、彼らが聖徳太子を捏造した、と言う文書はどこにもまったくない。
大山一派はそこの説明はしてないが、それは不思議に思わなかったのかな?記紀以前に生きた聖徳太子の関係文書が後世のもの、というよりも比較を絶して大きな謎だが。

不思議話は無尽蔵に溢れ出てキリがない。

和風ソーカル事件だな。

読む価値なし。

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