2025年1月19日日曜日

徳島県意富門麻比賣神社(宅宮神社)に伝わる神踊りと伊勢の神: 新・神明帳考証

徳島県意富門麻比賣神社(宅宮神社)に伝わる神踊りと伊勢の神: 新・神明帳考証

徳島県意富門麻比賣神社(宅宮神社)に伝わる神踊りと伊勢の神

徳島県徳島市上八万町上中筋558にある意富門麻比賣神社に参拝致しました。

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現在は、宅宮神社と呼ばれています。意富門麻比賣神社は、神代5代目の神を祀る全国で唯一の

神社で、延喜式神名帳に掲載される意富門麻比賣神社に比定される古社です。

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徳島駅から、園瀬川の清流に広がる田園地帯上八万町の中ほどに鎮座し、徳島県の無形民俗文化財

の一つである、神踊りが平安末期から受け継がれてきております。

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竹内宏夫氏による神踊りの解説より、御神踊りの部分を抜粋します。

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御神踊り

1.神風や玉吹きおろす神風や、悪魔を払う伊勢の神風

2.御幣とる手の間の内の神風や、悪魔を払う伊勢の神風

3.榊葉に木綿紙垂付けて、打払えば、身には穢の霧雲なし

4.踊らいのー踊らいのー~桜踊りは人踊り

5.難波津に咲くやこの花冬ごもり、今を春辺とさくやこの花

6.踊らいのー踊らいのー~桜踊りは人踊り

7.桜木をくだいて見れば花もなし、花の種をば春やもてくる

8.踊らいのー踊らいのー~桜踊りは人踊り

9.桜咲く遠山鳥のしだれ尾の、長々しくもあかね色かな

10.踊らいのー踊らいのー~桜踊りは人踊り

出雲踊り

1.伊豆毛の国の伯母御の宗女、御年十三ならせます、こくちは壱字とおたしなむ

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以下、12種類の歌があるのですが、踊りを伝承している家によって微妙に歌詞が

変わっており、原本がどうであったかは分かっていないようです。

出雲踊りにおいては、御年を御歳神として解釈することも出来、伊勢踊りにて

現れる、桜(さの神のよりしろたる倉)の神である歳徳神と符号し興味深いです。

御神踊りにおいて、悪魔を払う伊勢の風とは、豊受大神荒御魂、気吹戸主神のことでしょう。

伊勢の神は、花の種を持って春を持ってくると言っているのでしょう。

長野県諏訪にある先宮の宮司さんによれば、歳徳神信仰とミシャグジ信仰の共通性を

以下のように語っています。

以下引用

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 諏訪の信仰に「ミシャグジ」信仰がある。土地神とも云われ、諏訪の「建御名方命」(諏訪大社の

御祭神が諏訪に入って来た時に滅ぼした神であると云う。

ミシャグジとは「御」「さ」の神と考えられている。「さ」の神は農耕の神樣で、春山から降ってきて

「桜」に宿る。倉は生命が息吹く所である。早乙女、早苗、皐月、五月雨とみな「さ」が付いている。

「さ」の神は秋の収穫まで農業を見守って山に帰って行く。

正月には「歳神」として各家庭に招かれて接待を受けるのである。神が山から降ってくる信仰は当に

諏訪の「御柱」である。木遣り唄には「山の神樣里に下りて神となる」とあるが如くに巨木を奧山から

曵き出して、御社の四隅に建てる行事こそ、「さ」の神を里に呼ぶ行事ではなかろうか。

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伊勢から諏訪にかけての地域には、ミシャグジ様を祀る祠を見かけることが出来ます。

ところで、意富門麻比賣神社の御祭神は、神名帳考証によると、大戸惑女あるいは、大戸比賣となっており、

足濱目門比賣(= 天水塞比賣神)は同神としています。

宮司さんによると、大苫邊尊 大歳命、稚武彦命が祭神である、宮司家の祖神である稚武彦命は

京都吉田家より祭祀の通達があり祀っているとのこと。大苫邊尊(大戸比賣)が主祭神であり、

大歳命は、古くから相殿で祀られてきていて、合祀されたものではないそうです。

 

神踊りと御祭神で関わりがあるのは、歳徳神=御歳神の父神たる大歳神です。

本来の主祭神である大戸惑女(大戸比賣=おおとひめ)も、実は大歳神と関係しているのでしょうか?

大戸惑女(大戸比賣)の対偶神として、 大戸之道尊が祀られていないのは不思議です。

そうすると相殿に祀られている大歳神がなにやら、怪しいです。

 

大歳神を祀っている神社で、古い伝承が残っている神社を探してみました。

 

若狭国官社私考に、彌和神社の項があります。

以下引用

賀茂村の内大戸という処に、三輪大歳彦(おおとひこ)明神(大歳彦の読み、意富登彦)

と申して、山(大戸山)の麓に神籬の形ありて社なし。

 

大歳を「おおとひこ」と読んでいたようです。

 

おおとひこ(大歳彦)⇔おおとひめ(大戸比賣)

となり、対偶神としてあてはめられます。

 

大歳神の子御歳神の母神は、古事記では、香用比売としていますが、

 

 『向日二所社御鎮座記』によれば「神須佐男命の児大歳神、活須日神(いくすびのかみ)の

女須治曜姫命を娶りて生める子神」が向日神であり、向津日山に鎮座したと伝えている。

向日神とは御歳神であるとします。

また、記紀によると伊怒比女は大国御魂神の母神であるが、大国御魂神を祀る大和坐大国魂神社

の神名帳頭註の伝によると大国御魂神は大歳神と須治比賣の間の子であるといいます。
つまり、伊怒比女は須治比賣の別名ということになる。

 

以上から、御歳神の母神は、伊怒比女でもあるということになります。

香用比売と伊怒比女は分けられていますが、同神異名ということでしょう。

 

居籠祭と撞賢木厳之御霊天疎向津媛命の記事で書きましたが、伊怒比女は天照大御神荒御魂

の異名でした。

そうなってくると、大戸比賣尊は天照大御神荒御魂と異名同神ということになります。

 

さて、ここまでは神代5代目の大戸比賣尊を見てきましたが、

 

次は、神代6代目について興味深い伝のある神社を紹介致します。こちらもやはり出雲神が絡みます。

 

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出雲国意宇郡の出雲郷(アダカエ)に阿太加夜(あだかや)神社という神社があり、大穴持命と八上姫の子である

阿陀加夜怒志多伎吉比売命と、神代6代目の面足尊と惶根尊を相殿に祀っています。

なお、境内の北側には、出雲国風土記に記す「意宇の杜」と伝承する「面足の丘(面足山)」があります。

 

雲陽誌によると、阿太加夜神社(足高神社)について、以下の記述があります。

 以下引用

前略・・寛永八年堀尾高階忠晴修造の棟札あり、祭日九月九日、本社の北に御影浜あり、御寄浜とも云ふ、

明神御幸の地なり、土人横浜と云う、祀官伝て云ふ往昔洪水社辺に満々たり、

其時当社真の御柱にむしくひあり、歌に

 

     神風に伊勢の玉水ならすとも

       面足山を惶根にして

 

とあります。

 

こちらでも伊勢の歌が絡んできました。

5代目は伊勢の風でしたが、今度は水で、水神としての天照大御神荒御魂=瀬織津姫

のことを指しているのでしょう。

 

神代と伊勢の神は切っても切れないのでしょうか。

 

阿太加夜神社の境内にある荒神様(歳神)の藁蛇です。

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