太秦・牛祭の謎に迫る! 第五章
中山市朗です。謎の「牛祭」。
不定期に連載しております。
京都市太秦の広隆寺で行われる奇祭の謎を追っています。
実は、この祭、日本建国に大きく関わる祭、だと私は推察しております。
ですから、不定期ながらも、そのことを知っていただくべく、書いております。
メンドクセー、
結論だけ言えよ、
という、イラチ、の方は、これを読めば万事解決?
でも、この本に載せていないことも、出てきます。
前回、この広隆寺と四天王寺は、聖徳太子でつながっていると書きました。
『日本書紀』には、聖徳太子が摂津国に四天王寺を建立したと書かれ、聖徳太子が持っていた尊き御仏を祀るために造られたのが、蜂岡寺、現在の広隆寺と書かれています。
聖徳太子が亡くなったとき、新羅から遣いが来て、仏像一体と金塔、舎利、大きな灌頂の旗一条、小さい旗十二条をたてまつり、仏像は蜂岡寺に、金塔、舎利、灌頂旗などは四天王寺に納められたとも『書紀』にあります。
実は、四天王寺建立にあたって、スポンサーとなったのは秦氏なんです。
建築にあたって必要な資材は、秦氏が山背国から運んできたといいます。大工や人夫といった労働力も秦氏が受け持ちました。もちろん技術も秦氏によるものでしょう。
だから、四天王寺は、広隆寺とともに、秦氏の寺であるといってもいいと思います。。
というのは、広隆寺と四天王寺には、もう一つ、秦氏と関係のある大きな共通点であるんです。
それは、伎楽です。
伎楽とは、中国大陸から伝えられた芸能です。
大きな仮面を被って踊ったそうです。セリフは無く、無言劇。もちろん当時の器楽による演奏がありました。
『書紀』によれば、欽明天皇の頃に和薬使主(やまとくすしのおみ)によって、伎楽調度一具が献上され、推古天皇20年に、今の奈良県桜井市で、百済の味摩之(みまし)によって少年たちに伎楽の舞を習わせたとあります。
その伎楽面ですが、このような形をしております。
酔胡徒面
迦楼羅面
こういう面を被って、どちらかというと、面白おかしく踊ったようです。
これを聖徳太子が奨励しました。
そして、四天王寺、蜂岡寺、橘寺に、伎楽を踊ったり演奏する楽人たちを置いたのです。
この伎楽を舞い、演奏した楽人は、秦氏だったんです。
四天王寺で舞われた天王寺流の舞楽を「秦姓の舞」と称し、天王寺方の楽人は「太秦」と名乗っていました。
太秦。
太秦とは、秦氏の首領の名称です。
首領の住んだ土地を、太秦と称したのです。
太秦と称した土地は、初代の太秦を称した酒公が住んだと思われる河内太秦(現・寝屋川市)と河勝が住んだ京都の太秦の二か所だけです。
天王寺方の楽人が、太秦を名乗った、ということは、これは秦河勝の直系であるということに他ありません。
一方、秦河勝の住んだ本拠地は、山背の太秦。
広隆寺のある今の京都市にある太秦です。
太秦の太秦寺(今の広隆寺と思われます)にも楽人は置かれていて、つまりは、四天王寺と太秦寺で、同じ伎楽が秦氏によって舞われたと、簡単に想像できましょう。
伎楽は、その後衰退し、現在はほぼ絶滅状態にありますが、仮面を被って舞う、という形式は、現在の能に継承されます。能は猿楽とも呼ばれました。
猿楽の始祖は、秦河勝とされています。
猿楽は、神の前で舞われたので、神楽とされましたが、「上宮太子、末代のため、神楽なりしを、<神>といふ文字の片を除けて、旁を残し給ふ。是日暦の<申>なるがゆえに<申楽>と名づく」と世阿弥が記した『風姿花伝』にあります。上宮太子とは聖徳太子のことなので、猿楽の起源は伎楽であると考えても間違いはないと思われます。
猿楽を今の能の様式に変革させたのは、その観阿弥、世阿弥親子とされますが、この親子も秦河勝の直系を名乗っていました。そしてこのころから、面白おかしい部分は狂言に、仮面をつけて荘厳に舞うことは能に受け継がれた、と考えられます。
ちなみに、1300年以上にわたって、雅楽を世襲した来たという東儀家は、正式には楽人というんだそうです。
元は天王寺方の楽人だそうで、やはり昔は太秦を名乗っていました。東儀家も秦河勝の血を引いている、ということになります。
東儀家によると、秦河勝の四男が秦東儀と名乗り、そこから始まったというんです。六男も秦東儀を名乗ったようですが、こちらは途中で安倍家と名を変えました。
このように、日本の古代の宮廷舞楽、音楽の祖は、秦河勝ということになり、その後ろ盾に聖徳太子がいたと考えられるわけです。
さて、ここで、整理。
四天王寺と太秦寺。ともに伎楽の楽人が置かれ、ともに秦河勝の直系がこれを取り仕切った。
伎楽は仮面劇であり、神前で舞われていた。
牛祭。
秦河勝が建立したという広隆寺で執り行われる。
祭は楽器が打ち鳴らされ、摩多羅神は、仮面をつけて現れる。
牛祭と伎楽。
なんか共通点ありそうですやん。
続く。
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