『吉宗と宗春』そして「むねハルくん」
しつこいようですが、また尾張宗春の話。
海音寺潮五郎に『吉宗と宗春』(1995、文春文庫)という作品があるのを知り、早速、読んでみました。
さすがというか、うまいものです。戦前の作だそうですが、少しも古びていないし、時代のつけ方というか、全体の雰囲気が清水義範とは一味違います。いかにも時代小説らしい。
この作品の宗春は、わたしが前に書いたように(『尾張春風伝』)、幕府への謀反も覚悟して準備も進めますが、尾張藩の存続大事の家老たちが幕府にとりこまれて敗北、という筋書きになっています。やっぱりこの結末は避けられません。
中編にまとめられていますが、もう少し内容を濃くして、いろいろ書き込んでくれるとよかった。そうすれば宗春ももっと有名になったにちがいありません。
昭和14年(1939)から15年(1940)にかけて「風流大名」の名で雑誌「現代」に連載し、昭和18年(1943)の単行本は『尾藩勤皇伝流』と題して刊行。昭和62年(1987)には旺文社文庫から『宗春行状記』として出ているそうです。
出版されるたびに題名が変わっているというのは、あまり認められていなかった作品ということでしょう。今回の『吉宗と宗春』で定着するでしょうか。
清水義範の『尾張春風伝』は中日新聞に連載された(平成8年~9年(1996~97))そうで、最近の名古屋では宗春はかなり有名になっているようです。
「むねハルくん」という名前のマスコットキャラクターが、できていました。
「ムネを張って元気で頑張ろう」というメッセージを込めたNHK名古屋のデジタルキャラクターです。今の名古屋の街の基礎を創ったとも云われる尾張藩7代藩主の徳川宗春公にちなんでつけられました。http://www.nhk.or.jp/nagoya/ti_degi/08-mune/index.html
「むねハルくん、かわいーい!」というのは、宗春を評価することとはちょっと違うけれど、まあ名前も知らないよりはいいだろう、ということにしておきましょう。
追記:旺文社文庫の『宗春行状記』(1987)を見つけたので、画像をのせておきます。(2010/08/06)
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