羽賀寺:木造十一面観音菩薩立像
本像の特色のひとつは、当初の色彩がきわめてよく残っていることで、それ故に全国的に知られている。肉身部は黄白肉色、宝冠は代赭色、眉や眼は墨描、天衣には朱や緑が用いられている。寺伝では、この極彩色の観音さまを、勅願の御施主、女帝元正天皇の御影としている。
像高146.4㎝、ほぼ等身に近い。桧材の一木造りで、胸部には干割れが入っているのがよく伺える。像は、両肩の張りも大きく胴部をつよく引締めて、一木彫成の古像らしい肉どりを示し、裳裾の衣文にも平安初期彫像の風をうけて翻波式の衣文(大きな波と小波を交互にくりかえす)を刻み、加えて条帛の垂下部と裳の折返しが交叉するさまを刻み、衣文の装飾的な意匠にはすこぶるみるべきものがある。
しかし平安初期の作例と比べると、頭部も体部も奥行が減じて、むしろ軽快にみえ、また目鼻だちのすっきりと典雅なあたりをみれば、制作は10世紀のものと考えてよい。ただ垂下する右手がすこぶる長目で、膝に達するあたりも、貞観彫刻の例にならったものと認められ、その指先が外に反りかえるあたりも古風である。
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