四国行脚の巻(10)… 「剣山」の登拝(中)
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今回の剣山登拝において、そのメインとなる場所とは、先ほど登頂した「次郎笈」から少し降ったところにあった。その場所には、とある界隈で噂の「鏡岩」があった。
これまでも、私なりに列島各地の磐座を巡ってきたなかで、いわゆる「鏡岩」と称される岩石を何度か見てきたわけだが、剣山の「鏡岩」は別格で、その磨かれた岩面の反射率も凄いという噂を耳にしていた。
ゆえに今回の剣山登拝において「次郎笈」まで足を運んだのは、その「鏡岩」を見るためだけであった。
しかし、その目的の「鏡岩」が存在する場所を、事前に特定することができないまま…おそらくココだろう…くらいのアバウトな感覚で、現地に乗り込んだのであった。それほど情報が少なかったのである。
濃霧で前方が見えづらいなか降る道中では、果たして「鏡岩」に辿り着けるかどうか不安になりつつも、それらしき大きな岩塊が眼前に現れてきたのは嬉しかった。(冒頭画像に映る岩塊が「鏡岩」の本体)
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その岩塊に近づきつつ、かつてネット画像で何度も見た、特徴のある「鏡岩」の"カット面"を確認することができ、とても安堵したことを憶えている。(画像に映る岩塊の左下が、カットされた鏡面の部分)
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この上の連続する二枚の画像は、この岩塊の下方部分の左上から右下にかけて、まるで一気に断裁したかのような見事な"カット面"を、少し角度を変えて撮影したものである。
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次に上の画像は、その岩塊の断面を鏡のように磨いたと思われる艶やかな岩面を、この「鏡岩」の正面に回り込み、上方から下方に向かって撮影したものである。
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そして上に並べた二枚の画像は、まるで鏡のように反射する様子がわかる証拠写真として、よく反射する部分の岩面に手指を当てて撮影したものだ。
この場所に滞在した時間帯が、たまたま濃霧(霧雨)の天候だったこともあり、その岩面に当てた手指が、まるで鏡のように反射して石面に映り込んでいる様子が良く分かる。
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もちろん私なりの妄想ではあるが、やはりこの「鏡岩」における、この角度による岩塊の断裁や岩面の研磨等については、明らかに「人為的」だと思うのだが、それでは何時・誰が・何のために、この鏡のように光る岩を成形したのであろうか・・・。
興味深いことに、現地でこの「鏡岩」の岩面が向かう方位を調べると、ほぼ真西であったことから、おそらく春分や秋分をはじめとする四季折々の節目となる日を選択し、西方に沈みゆく太陽光の反射を利用できる時間帯に、その「反射光」を活用した(例えばモールス信号などの)通信技術を用いて、この鏡岩が反射する光が届く山麓の住民と、この地域の生活に欠かせない情報を交換していたのではないか・・・。
つまり、古代人が活用した「光通信ネットワーク」の受発信装置としての役割を、この「鏡岩」は担っていたと考えられるのである。それが「いつ」からかと問われれば、とりあえず「縄文時代」からと答えておこう。
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この上に並べた三枚の画像は、冒頭に掲げた角度の違う二枚の画像とは、ちょうど反対となる岩塊の側面から、その鏡面たる鋭いカット面と反射する姿を見てもらおうと、それぞれ角度を変えて掲載した。
この現在の「鏡岩」の鏡面については、長年の浸食のために、良く反射する場所は限定されているのだが、その全体としての反射率は、今でも驚嘆に値するものがあると思われた。
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それにしても、この上下の画像に映る岩塊を古代人が加工し、おそらく「光通信」のための「鏡岩」を成形したと思われる場所では、それこそ古代文明の片鱗が今に伝わる「大いなるもの」を体感させられた、実に濃厚で充実した一時であった。
さあこれから、いよいよ剣山山頂と宿泊施設に向かって、折り返し約2kmの縦走となる。この「鏡岩」での感動を胸に、現地到着までの道のりも存分に楽しもう!
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