2025年1月18日土曜日

太龍寺縁起


太龍寺縁起については、ぐーたら秋山さんのサイトが詳しいのですが、‬‪http://goutara.blogspot.com/2011/01/blog-post_06.html‬
‪ぐーたらさんが参照しているのは以下の二冊でしょう。
‬‪(国会図書館デジタルコレクションに登録すると閲覧可能)‬‪
続群書類従第28‬‪ 
https://dl.ndl.go.jp/pid/936489/1/171‬‪
鷲敷町史 (1981)‬‪
https://dl.ndl.go.jp/pid/9774092/1/63‬

第1章/鷲敷への道
114頁

舎心山太龍寺縁起
金剛遍照 
 それもって諸仏鎮場多しといえども、或は劫初より以後、出ずる砌をもって徳を揮う、或は仁王即位より以後、当某御宇、宿に因り用を積み威力を数う。かたじけなくも勅にしたがい、紫宸の宣に応じ某、霊地に開くあり、或は高賤平等もって益、信、新に初め成り、興隆正により運び歩みあり。
 或はまた超生勝生高祖の作徳をもって仏を安んじ菩薩像あり。また普賢大士の昔行を修し生により果に随う。沙門、一気発心を以って十方之勤志を集め、徳属を累ね有請を減じ信仰す。在々処々是くの如し、その阿波国那賀郡舎心山太龍寺に及ぶ。天神七代のうち六世、面足尊、惶根尊降り磯輪上に居坐す秀真国これなり。当七代伊弉諾尊、伊弉冊尊居坐に降る玉墟うち国産み八嶋あり。まず淡路州を産む、これ淡道穂狭別という。 
 つぎに伊与産む二名州あり、一身四面あり、一に愛止比売と言い、これ与州なり、二に飯依比古と言い、これ讃岐国なり、三に大宜都比売と言いこれ阿波国なり、四に(建)依別と言い、これ土佐州なり元根は伊与二名国ところ人情の賢別二名を称すと言う。四国名中、この大宜都比売、天神のため相応に玉城内国のため恵会す。天地開闢以後、天棚霧中、金色雲登る。一茎二神、金色雲に乗り、大雨降り濁潮となる。和泥、世界を建立す。
 風輪をつむ上水輪となり、最も下におり、その量無数なり、この上水輪、深さ十一億三萬、下八洛叉、原十六洛叉、凝結して金と成る。広厚十二洛叉、三千四百半、周囲此の三倍なり、一洛叉此言、三億喩繕那と言い由旬なり情あり業ます上のゆえ、まず虚空に於て最下に風林を生ず。その量、無数に広し。厚さ十六億由旬、その上水輪あり、厚さ十一億二万由旬。上、三億二万由旬、凝結して金と為る。下八億由旬なお水と為る。その二つ広さその量これ同じ、その径十一億三千四百五十由旬、風水金、かくのごとく立つ。風、頻りに沫と為り吹き上げ須弥山となり乃至は四大州八万小州鉄と成り山等を囲む。彼の万億世界建立同時なり。これ三千六千114世界と言う。かたじけなくも白鏡尊上名を現し替え光、天に音す、須弥四化して世に下し王種を続く。光音天上白正かな吾勝尊あり。
 然るに須弥四方、五十二洲数あり、四方王種、皆これ梵天王の種子祝う故、ことごとくかたじけなくも天照大神宮の貴孫の御子孫なり、自ら須弥東王種の名敕せり、大梵天王の末を継ぐ、然し東南方の五種の大梵天王種の末なり、西北方王種妙法の大梵天王の末を継ぐ、北方同じく西南方乃至、下方上方世界尸棄は大梵天王の種末なり、この南閻浮堤大日本国在るは、百億世界開闢の根種と為す、十方世界の種子と為す、故にこれ遮摩羅洲と言う。遮摩羅は練日羅なり。万物金剛と号すなり。然るに草木万物の惣名と言う。正に十方世界にこの州より五穀種子の実を賦すなり。保食神為し生往する洲故なり。
 また、かたじけなく王種、天照太神宮の直道の御末継ぐ、王種尽きず、吾に視勅在る如し、かけまくもかしこく貴き上、重く敬うべし、是れ国土長く思いを養い報い奉り送りもって慈悲と為し正直柔和なり、末世、下劣種有るべし。ただし孝心を奉じ用い崇め高位性を得べし、開闢の始め飛行自在と為し、明身光あり男女相違無し。形色、端厳、果報、殊妙なり、人寿無量なり、時に自量、千尺あるいは二千尺、食うところの地みな餅なり。地よりまた甘泉涌出す。その味、乳蜜の如し。これを競い取り食す。故に人身漸く堅く重し、身光に隠れ、神道を失う。然りと雖も、ここ玉城内国において、かたじけなくも天照太神行き求聞し基を持す。為に尽くさず三界百億の屋形祈禱し鎮静す。舎心地長く養いあり、御慈悲かたじけな言語及ぶべからず。末世、ここに於て太龍寺に詣で御本尊と為す。宝前、日月星を奉拝するは治世の上荘厳大家勝をうけ快楽を妙し保つにあらずや柔和正徳を得、奉るべし。聞くや否や舎心を得るに因り一切衆生を鎮治せしむ。
 果報、福智、愛の三徳故に名は舎心、往昔、本堂無く、御影向は虚空蔵の心石の安坐を示す所、空海、神代を尋ぎ妙貴金剛遍照、生五十復た拝して安坐に登る。百日六時を期し温座す。求聞、護摩を持すこと三十五日満願成就せしむ。つぎ六時温座す。神道、意の如く護摩を納受す。同じ神楽五足、護摩法三十五日。大徳成就せしめ畢わんぬ。一切衆生、本楽尽さず。解除供二十一日成就せしめ畢んぬ。天地和合、風調い、雨順う祓供し九日成就せしめ畢んぬ。その日帝釈天御影向を垂る。不動尊の御頭を作り賜う。空海、両手かたじけなく大神宮を作る。両賓童子を作す。五身あり、衣体作り奉り空海の両足、鷲敷一殿大己貴尊を作す。この不動明王一度、輩に見せ奉る。生々世々無病息災うたがいなし。また金剛の登山日より本堂閣、新に空海の峰承聞伝所を造らしめ奉る。往昔、神武天皇狭野尊、筑紫日向宮崎宮より大和国御坐入りの時、五月十六日舎心山、行幸あり、舎心の峰の明星、御影向石に通じ夜上に向き明星に礼し給う。公卿数輩、軍兵、蹲踞す。低頭出現し明星を念じ奉る。神武五十四年歳次甲寅五月十六日寅時、明星出現在り、自光の中降す、五寸虚空蔵あり、舎心峰の石盤、安坐を示す。その円き光の連三十五脈、輝き天地に在り、その光数滴り集合する所、閼伽水涌出す。和修吉龍王を守護し常住なり。
 また西南方に当る地を鎮め三十二町敷、三十二相の霊地有り。神代の初二神上、珍貴尊を産し、祝後上に三柱彦神を産す在り、当に三生の上産に蛇あり、蛭子、足無し分間無し、天櫲樟船に乗せ奉り大海原に放し捨て在り、和修吉龍、拾いとり奉り養育す。自地を授け出でて売買を主とし万民に幸す。愛敬神あり、名を戎と奉る。今鷲敷社にあり、その時、天櫲樟船に乗りあって上、久しく御鎮座の辺と為す。また鎮殿造社三間形、南殿三柱神あり、かたじけなくも天照大神宮鹿嶋一御殿、春日太明神、ならびに天照大神宮第一種子神あり。中殿西宮に愛敬戎三郎神を祝う。坎殿三柱神あり。白山に弁財天、三輪に大己貴尊あり、閼伽水を涌出し守護なし遷宮奉る。空海天長二年歳次乙巳六月一日本堂再興成就、元を治納す。 
 去る五月十六日より御本尊作を企て奉り誓う。神武行幸日、五寸虚空蔵涌降なり奉る等□服身なり、同六月一日寅時御本尊安坐鎮静す。真実恭敬勤行し満足せしめ畢んぬ。これひとえにかたじけなくも天照大神宮御正勅に依る者なり。一度参詣、値遇の輩、富貴子孫永く継ぐ。寿命長遠無病息災の徳、疑いなし。天長二年歳次乙巳、六月二日より空海福定洛叉に住む。同七日結願満足す、兼ねて時に五日巳の時、帝釈天その青白童子を引いて影向を垂る。手、金剛遍照いわく。我れこれかたじけなくも天照大神宮の御勅を順じ奉り影向を垂れ当山の再興成就す。貴意、希りあり歓喜し舎心開闢、御坐に安ず。一百十億二千余歳新たなる希いあり。金剛遍照大伽藍再興成就しこれ円満に及んで身、不動明王、三界のため舎心、明星石の奉安座を擁護する者なり。かたじけなくも天照太神宮、毎日午時、御影向を垂れ摩頂に至る。大弁財天女十五童子、戎愛敬神、たちまち守護を加う。草木萬情、種子を絶やさず萬民を与えしめ衣食、意の如し。この山こ和修吉龍王、婆竭羅龍、坐を示し守護せしむ。霊地は、龍神直に勅言を誓う。尽未来際、燈明を築け毎夜、生死長夜を照らす。求聞持、成就力。一切衆生悪道に堕すべからず誓約堅固。もって信言かたじけなくも天照大神宮の額字を奏請す。かたじけなくも天照大神宮勅宣を返し、龍神と為り霊地を守護す、吾また守護を加うる所の者なり、太龍寺と号し奉る。かたじけなくも勅言を訖す。
 帝釈天、その額形、献上の勅あり、時に四天大王中、毘沙門天その額形、帝釈天に献上す。その時、広目天擎硯筆あり、帝釈天舎心山居三字、空海に賜う。余り微妙、歓喜、覚めず了知、三字を奉書す大龍寺額これなり。今よりのち当山において本求聞持し奉らず滅亡知るべし。帝釈天帰幸ののち、厚恩を報じ奉らす。北方五十町を隔て毎夜、初丑の刻参詣奉る。天地久のため、一切衆生求める所、円満無病延命なり、仏法人の境、常住安穏常住繁昌治定なり。 
 天長二(八二五)年歲次乙巳六月十三日   金剛遍照敬白

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