実はヨハネ福音書の著者はグノーシス主義の影響を強く受けていたという学説を提唱して、学界に衝撃を与えた新約聖書学者にケーゼマンがいます。
この解釈は大貫先生が述べるようにすでに定説になっていますが、今あらためて読み返しても凄まじいインパクトがありますので、以下に御紹介します。
「[…]ヨハネがグノーシス主義的告知を準備しているか、あるいはすでにその影響下に立っていることも明らかである。なぜなら、グノーシス主義的告知は、地上に散らされた魂が天上の故郷のために集められることの中に世界史の目標を認めているからである。このグノーシス主義の問題は、われわれの福音書が流布し始めた時期が考えられねばならないような時になって始めて浮かび上がってくるのではない。それはすでにヨハネ的終末論の全体を通して提出されている」(『イエスの最後の意志』、p.173-174)
グノーシス主義自体が原始キリスト教成立以前から存在していたことも現在では定説になっています。
ちなみに、大貫先生の『ロゴスとソフィア』には『イエスの最後の意志』の「解説」が「ヨハネ福音書とグノーシス主義」として再収録されています。
近年の『ヨハネ福音書解釈の根本問題』でも、やはりケーゼマンのこの著作に新たな解説が加えられているため、ヨハネとグノーシスの問題系は大貫先生のライフワークの一つだと言えるかもしれません。
#読了
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