2025年12月22日月曜日

グノーシス主義の最大勢力の創始者ヴァレンティノス

 
 
鈴村智久 Tomohisa Suzumura
⁦‪@SUZUMURA_Inc‬⁩
グノーシス主義の最大勢力の創始者ヴァレンティノスの多くの著作は断片しか現存していませんが、実は彼が自分の神秘体験を綴った可能性が高い「夏の収穫」という7行詩がヒッポリュトスの『全異端反駁』に収録されています。
この詩についてのH・J・クラウクの解説には驚くべきものがあります。 pic.x.com/BM0bCFuyQK
 
2025/08/20 22:31
 
 
グノーシス主義の最大勢力の創始者ヴァレンティノスの多くの著作は断片しか現存していませんが、実は彼が自分の神秘体験を綴った可能性が高い「夏の収穫」という7行詩がヒッポリュトスの『全異端反駁』に収録されています。
この詩についてのH・J・クラウクの解説には驚くべきものがあります。

「夏の収穫」(全文)

「私はすべてのものが霊によって宙づりにされているのを見る。
私はすべてのものが霊によって支えられていることを理解する。
肉体は魂にぶらさがり、
魂は空気に固定され、
空気は天空にぶらさがっている。
深みから実が運ばれてきたり、
そして母胎から胎児が運ばれてきたるのを[私は見る]」
(『初期キリスト教の宗教的背景(下)』、p.276-277)

ミュンヘン大学新約聖書学教授や国際新約学会会長などを歴任したフランシスコ会司祭でもあるクラウクによれば、この詩で歌われている「夏の収穫物」は「認識」(gnosis)による収穫物を意味しています。
前半の詩行によれば、この世界のあらゆる事物は、あたかも木の実が樹木にぶらさがっているように、霊(聖霊)という見えない樹木によって支えられています。
どんな実にも収穫の時がありますが、この見えない実から生まれてくるのは「胎児」として表現されています。
中期プラトニズムでは神のロゴスは「胎児」として表現され、この最後の行はそこに初期キリスト教におけるイエスの生誕伝承が結び付けられています(同書、p277)。
つまりこの詩は、木から実が収穫されるように、可視的世界を支えている見えない霊から「認識」によって収穫できるものがあり、それこそがイエス・キリストに他ならないということを伝えています。
さらに興味深いのは、ヴァレンティノスがこの世界における霊の充満を「見る」と表現している1行目です。
つづく2行目では「理解する」と続いており、これは「見る」ことによって内容の「理解」が事後的に起きたこと、つまり何らかの体験が彼自身に起きたことを暗示しています。
ヴァレンティノスがその後の重要なグノーシス派の指導者たち(マルコス、プトレマイオス、ヘラクレオン、アクシオニコス)の師として尊崇されたのは、彼が中期プラトニズムやフィロン哲学に精通し、それらを学問的に「理解」していただけでなく、実際にまず霊的な世界を「見る」経験を持っていたからであると考えられます。

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