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[第十一章] 宝塔の出現 妙法蓮華経見宝塔品第十一◆けんほうとうほん
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天空の法座
こうして諸仏が参集したようすは、清らかな池に蓮の花が咲きそろい、夜の闇に灯火が点々とともされたかのようでございました。諸仏の身体が発する芳香は十方世界におよび、神々も人々も風に小枝がなびくように心を仏に向けております。 世尊は、諸仏が集まり、ことごとく宝塔を開くことに同意したのを聞いて、座から立ち上がり、空中に身を浮かべました。そして、多宝如来の塔の扉に至り、右手の指で扉を打ちました。 すると、大きな城門の掛け金をはずすかのような音がとどろいて、扉が開きました。その中に獅子座があり、多宝如来が坐しておられたのでございます。その塔には遺骨が納められたと申しますのに、多宝如来の全身があり、あたかも禅定に入っておられるかのように見えました。 そのとき多宝如来は、ふたたび声を発したのです。 「讃えよ、讃えよ。釈迦牟尼世尊は妙法蓮華経を説かれた。我は法華経を聞くため、ここに参った」 幾千万億劫の過去に入滅した仏がそのように告げたのを聞いて、人々は未曾有のことに驚嘆し、多宝如来と世尊に花々をささげました。
そのとき多宝如来は身体を動かし、宝塔の中の座の半分をあけて世尊に呼びかけました。
「釈迦牟尼世尊よ。どうぞ、この座におつきください」
こうして人々は、宝塔の獅子座に二人の如来が並んで結跏趺坐した姿を仰ぐことができたのです。けれど、あまりの高みにあり、人々から遠いところでございました。
「世尊に申しあげます。如来の神通力をもって、わたくしどもをお近くにまいらせてください」
世尊はその願いを容れて人々を間近の空中に引き上げ、大空の高みに置きました。そして、このように告げたのです。
角川ソフィア文庫
法華経

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