2024年7月23日火曜日

(3ページ目)6本の映画で理解する「大統領(候補)暗殺」(映画評論家・北島純)|日刊ゲンダイDIGITAL

(3ページ目)6本の映画で理解する「大統領(候補)暗殺」(映画評論家・北島純)|日刊ゲンダイDIGITAL

6本の映画で理解する「大統領(候補)暗殺」(映画評論家・北島純)

■レーガン暗殺未遂につながった「タクシードライバー」

 まずはマーティン・スコセッシ監督「タクシードライバー」(1976年、ロバート・デニーロ主演)。72年のジョージ・ウォレス大統領予備選候補(民主党)狙撃事件に着想を得た作品で、カンヌ・パルムドールを受賞した名作中の名作だ。街娼を演じたジョディ・フォスターの偏執狂的ファンがこの映画に感化され、81年にレーガン暗殺未遂事件を起こしている。

 政治家の暗殺に付いて回るのが「陰謀論」。ケネディ暗殺はCIAやFBI、マフィアの陰謀で、黒幕はジョンソンだとする説も根強い。世界的ヒットになった「JFK」(91年)や「JFK 新証言 知られざる陰謀」(2021年)で「軍産複合体の陰謀」を追及してきたオリバー・ストーン監督は現在、一周回って親プーチンに転じている。

 陰謀論が生まれる土壌には情報の混乱、とくに暗殺現場の混乱がある。今回のトランプ暗殺未遂でも犯人トーマス・クルックスがなぜ屋根から狙撃できたのか疑問を呈する声も強いが、断片的情報に飛びつくのではなく総合的かつ慎重な評価が必要だ。「バンテージ・ポイント」(ピート・トラビス監督、08年)は大統領暗殺現場を複数視点で描いた実験的な映画として参考になる。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/358002/3

6本の映画で理解する「大統領(候補)暗殺」(映画評論家・北島純)

 暗殺者の動機はなにか。憤怒か大義か。この点で1979年に起きた朴正煕大統領暗殺を描いた「KCIA 南山の部長たち」(ウ・ミンホ監督、2020年)は見逃せない。軍事独裁政権を支えた側近中の側近である韓国中央情報部(KCIA)部長がなぜ朴大統領を射殺したのか。積もり積もった憤怒の心情をイ・ビョンホンが丁寧に演じている。

■ニコール・キッドマンが熱演「ザ・インタープリター」

 これに対して国連ビルを舞台としたアフリカ某国大統領の暗殺計画を描いた「ザ・インタープリター」(シドニー・ポラック監督、05年)も必見だ。国連通訳として働くニコール・キッドマンの人生を懸けた大義が暗殺と交差する経緯は衝撃的でもある。

 政治家の暗殺はデモクラシーを直接に脅かす。模倣犯の発生防止に留意しつつも、事実の解明は再発防止に欠かせない。犯人クルックスの動機も含めて、暗殺未遂事件の全容解明はこれから進んでいくが、その動向もトランプ陣営には格好の追い風になる。バイデンは後継候補にカマラ・ハリス副大統領(59)を指名した。バイデンよりも若く多様性の象徴でもある。しかし、ミシェル・オバマ元大統領夫人ならまだしも、カリスマ性と実績に乏しいハリスでは今のトランプに競り勝つのは厳しいだろう。「確トラ」(確実にトランプ)フラグは既にあがっている。

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