頭上運搬
頭上運搬(ずじょううんぱん)は人が荷物を頭に載せて運ぶこと。世界各地の人類に見られる行動であり、特に女性によって行われる傾向がある[1][2]。荷物を容器にいれて載せたり[3]、荷物と頭の間に輪をはさんで載せたり[4]、荷物を吊るした天秤棒を頭に載せたり[5]する。頭頂部に荷物やその容器をのせる方法と帯を額(前頭部)にかける方法とがある[5]。
Ray Lloydらの研究によれば、頭に載せるものの重量が体重の20%までであれば、十分に修練を積んだ人は通常の歩行に消費する以上のエネルギーを消費せずに運搬できる[6]が、一定以上より重い荷物や速い歩行の場合に荷物を頭上に載せて運ぶことが背中に載せて運ぶことより効率的であるとは考えられない[7]。
歴史
日本では一遍上人絵伝や北野天神縁起など中世の絵巻物に頭上運搬が行われていたことが記録されている[8][9]。京都に柴・薪・花を売りに来る女性商人である大原女・白川女も頭上運搬をした[10][11]。近世以降この運搬法は廃れる傾向にあった[9][8]が近代でも西日本の海沿いの地域に伝統が残った[8]。この運搬法は日本各地でイタダク、ササグなどと呼ばれた[5]。アイヌは荷物を背負う際、背負い袋や背負子に取り付けた荷縄を頭の額の部分で支えた[12]。沖縄ではティルと呼ばれる竹籠を頭上にのせて運搬した[5]。国領地方ではティルの紐を前頭部に引っかけ、荷は背に載せる[9]。
北西ヨーロッパでは中世に女性が重く持ちにくいものを運ぶ手段として頭上運搬をしていて、遅くとも14世紀までこの習慣はあったが、19世紀中盤までにほとんどなくなった[2]。
出典
- 八木奘三郎 「頭上運搬」 人類學雜誌 Vol. 32 (1917) No. 10 P 296-299
- ^ a b Jane Whittle (February 23, 2016) Why do women carry things on their heads? | The Humanities Blog Why do women carry things on their heads? | Women's Work in Rural England, 1500-1700
- 奈良県明日香村 関西大学文学部考古学研究室石舞台古墳 巨大古墳築造の謎 解説書 2012年 p.8
- 太田心平 みんぱくのオタカラ 頭上運搬用輪 2013年10月18日刊行
- ^ a b c d 須藤功『フォークロアの眼3 運ぶ』「生活に見る『運ぶ』の諸相」ISBN 978-4-336-01596-9
- The art and science of carrying things on your head. By Jessica Dweck Aug. 27 2010 6:25 PM
- R. Lloyd et al (2010-07-01), A comparison of the physiological consequences of head-loading and back-loading for African and European women, 109, pp. 607-616, doi:10.1007/s00421-010-1395-9
- ^ a b c 石井 伸夫 龍蔵と「仏塔」と「いただきさん」 アワーミュージアム第56号2015年7月31日発行
- ^ a b c 横出 洋二 日本中世における身体技法について: 身体の姿勢を中心とした試論 1995
- 橋本暁子 【第64回】「いただきさん」 | NAFUマガジン | 新潟食料農業大学
- 京都近郊農山村における柴・薪の行商活動 2011
- アイヌと自然デジタル図鑑 月刊シロㇿ12月号 エカシレスプリ14 荷縄あれこれ
外部リンク
- 重要文化財 月次風俗図屏風(つきなみふうぞくずびょうぶ) (三枚目に頭上運搬をする人々が描かれている)
- 朝鮮写真絵はがきデータベース 検索ワード:頭上運搬
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