「異なる家族の形」? 5体の人骨巡る姥山貝塚の謎、一部判明
縄文時代中期~後期(約5000年~3000年前)に形成された国指定文化財「姥山貝塚」(千葉県市川市柏井町1)の同じ竪穴式住居跡から見つかった人骨5体のうち、成人女性と子どもに血縁関係がないことが、新潟医療福祉大などの調査で判明した。 【写真特集】縄文の代表 大型遮光器土偶 ◇「廃屋墓」の可能性 同貝塚は、東西約130メートル、南北120メートル。1926年の東京人類学会が実施した発掘調査で、全国で初めて貝層の下から竪穴式住居跡の全容把握に成功した。ハマグリやアサリなど30種以上の貝が出土し、約30個の竪穴式住居跡が見つかったが、その一つの住居跡の床から、折り重なった形状で子ども1体、成人女性2体、成人男性2体の計5体の人骨が発掘された。 5体については当時、同じ貝塚からフグの骨が見つかったことで、フグ中毒のほか、災害、疫病による死亡説など死亡原因やお互いの関係などで大きな話題となっていた。 同大などのグループは2020年4月から4年かけて、従来の考古学的な調査とは別の、人骨を使ったDNA分析や年代測定、食性の分析など生物学的な調査を実施。その結果、母系の血縁関係が分かるミトコンドリアDNAの分析で、子どもは成人女性2体との間に血縁関係がないことが分かった。また、4~7歳とみられていた性別不明の子どもは5歳前後の男子だったことも判明。食性の分析からは女性1体だけが魚類を多く食べていたことも分かり、5人は食事を共にしていない可能性が高いことも明らかになった。 同大の佐宗亜衣子助教は「同居していた家族というより、主に関東でみられる縄文中期に集落で亡くなった人を古い住居跡に埋葬する『廃屋墓』として利用していたのではないか。一方、縄文時代には私たちとは異なる家族の形があった可能性もある」と指摘する。 調査結果は、10日にメディアパーク市川(同市鬼高1)で開催されるシンポジウム「縄文時代の姥山貝塚の5体の人骨の謎に迫る」(同大と市川考古博物館の共催)で報告される。午後1時開演、参加費無料。問い合わせは同博物館(047・373・2202)。【石塚孝志】
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