ミクヴェ(沐浴場)
ユダヤ人が身を清めるために入るというミクヴェ(沐浴場)のことは、これまで聞いたことはありましたが、本物は見たことがありませんでした。
最近エルサレムに旅した私は、そんなミクヴェの一つを実際に見ることができました。何代もイスラエルに住んできたユダヤ人の子孫である、ガイドのローネン・マリク氏が案内してくれたのですが、それはヨルダン川西岸にありました。彼によると、2000年前のものとされるこのミクヴェが発掘されたのは、アブラハムが息子のイサクと共に歩いたと言われる「Patriarch way」という街道沿いでした。
2000年前のミクヴェの前で
"イスラエル・ユダヤ・中東がわかる雑誌"として知られる『みるとす』最新号6月号に、ちょうどミクヴェに関する記事が出ています。
それによれば、ミクヴェでの沐浴は、汚れを落とすといった生活上の行為ではなく、信仰の儀式として「身を洗う」ことで、律法によって定められた場所と方法で水に入ることが必要なのだそうです。
1970年後半からの考古学発掘で、2000年以上前にエルサレムにあった神殿の周辺から、多くのミクヴェが発見されました。神殿に詣でる人々が、そこで入場前に身を清めたのだろうと考えられるそうです。また、エルサレムに向かう街道沿いにも、巡礼者が使うミクヴェが発掘されています。ミクヴェの水は、湧き水などの自然界の水を含んでいなければならなかったそうです。
古代のユダヤ人が、神殿に詣でる前に体を清めたミクヴェは、その後、月経が終わった後の妻が、夫との交わりを再開する前にも使われるようになりました。
今回見学して興味深かったのは、ミクヴェに降りて行く階段と上がってくる階段が別々だったことですが、それは、身を清め終わった者にこれから入る者の汚れがつかないようにするためだったのだそうです。
ミクヴェは現代も存在し、たとえばロサンゼルスには、ユダヤ系アメリカ人が住む地域に集中して何件かあります。何千年も続く律法を今も守り続ける人々がいることに、驚くと同時に尊敬の念を抱きます。
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