♪ 589 | 「もの思ふと 過ぐる月日も 知らぬまに 年もわが世も 今日や尽きぬる」 | 「物思いしながら過ごし月日のたつのも知らない間に 今年も自分の寿命も今日が最後になったか」 |
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朔日のほどのこと、「常よりことなるべく」と、おきてさせたまふ。 親王たち、大臣の御引出物、品々の禄どもなど、何となう思しまうけて、とぞ。 | 元日の日のことを、「例年より格別に」と、お命じあそばす。 親王方、大臣への御引出物や、人々への禄などを、またとなくご用意なさって、とあった。 |
源氏物語 41帖 幻:あらすじ・目次・原文対訳
本ページは、高千穂大名誉教授・渋谷栄一氏の『源氏物語の世界normal』(目次構成・登場人物・原文・訳文)を参照引用している(全文使用許可あり)。
ここでは、その原文と現代語訳のページの内容を統合し、レイアウトを整えた。速やかな理解に資すると思うが、詳しい趣旨は上記リンク参照。
幻のあらすじ
光源氏52歳の正月から十二月の晦日までの一年間。
紫の上が世を去り、また新しい年がめぐってきた。新春の光を見ても悲しさは改まらず、源氏は年賀の客にも会わずに引きこもっている。そして紫の上に仕えていた女房たちを話相手に、後悔と懺悔の日々を過ごしていた。明石の中宮は紫の上が可愛がっていた三の宮(匂宮)を源氏の慰めに残し宮中に帰る。
蛍兵部卿宮〔源氏の弟〕が訪ねてきて、かつて催した香合で紫の上が合わせた香を回想して褒め称えた。それと同時に、「どうという取り柄がない妻を亡くしても、悲しみは尽きぬもの…ましてやあのような…」と自分の妻を亡くした時の記憶がよみがえり、更に涙ぐむ宮。源氏は(そうだった、宮も北の方を亡くされていたのだ…)と心中を思いやる。宮は北の方を早くに亡くし、かつては玉鬘に思いを寄せていたが、のちに髭黒の娘・真木柱と結婚したのだ。彼女が住む式部卿宮の屋敷へ婿として通っていたが、夫婦仲はあまりうまくいっていない様子で、足が遠のいているという噂を聞いていた源氏。(ましてや宮は、未だに北の方を忘れかねているのだ…)お互いのつらい現実に、さらに悲しみがこみ上げる源氏だった。
春が深まるにつれ、春を愛した故人への思いは募る。しかし女三宮や明石の御方のもとを訪れても、紫の上を失った悲しみが深まるだけだった。
四月、花散里から衣替えの衣装と歌が届けられる。
五月雨の頃、夕霧〔源氏と葵の子〕に紫の上の一周忌の手配を頼む。八月の命日には、生前に紫の上が発願していた極楽曼荼羅の供養を営んだ。
年が明けたら出家〔注〕を果たす考えの源氏は、身辺を整理しはじめる。その途中、須磨にいたころに届いた紫の上の手紙の束が出てきた。墨の色も今書いたかのように美しく、寂寥の念はひとしおだが、すべて破って燃やしてしまう。
十二月、六条院で行われた御仏名の席で、源氏は久しぶりに公に姿を現した。その姿は「光る君」と愛でられた頃よりも一層美しく光り輝いており、昔を知る僧並びに出席した貴族たちは涙を流した。
晦日、追儺にはしゃぎまわる三の宮を見るのもこれが最後と思う。源氏は最後の新年を迎えるための準備をした。
もの思ふと過ぐる月日も知らぬ間に年もわが世も今日や尽きぬる
(以上Wikipedia幻(源氏物語)より。色づけと〔〕は本ページ)
注:ここで出家とされているが、前の巻の紫と後の八の宮と同じで、寺に入る意味ではない。次巻冒頭で「光隠れたまひにし」=お隠れになったといっても、物理的に隠れたのではないことと同じである。隠居と掛けた死亡のこと。雲隠れというのもずれている。猫が隠れて死ぬのと同じ。
本巻でも端的に「世を去りたまふ」とある。これを出家とするのは字義上無理すぎる。今まで本意を遂げるとか、道に入るとぼかされてきたが、「世を去」で出家とするのは無理。
それなら死ぬ前提で話が進まない。朱雀院は出家後も元気に出現する。微妙な言葉は、全体を見ないとその意味は確定できない。ごく一部を見て決め打ちして微妙にずらされた文脈の文言に強引に代入しまくるのが、古文読解のお決まり。
目次 | |||||||||||||||||||||||||||
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・和歌抜粋内訳#幻(26首:別ページ) | |||||||||||||||||||||||||||
・主要登場人物 | |||||||||||||||||||||||||||
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出典 | |||||||||||||||||||||||||||
校訂 | |||||||||||||||||||||||||||
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