2025年3月8日土曜日

崩落した「石垣の名城」、顔認証システム応用で精巧に復元へ : 読売新聞

崩落した「石垣の名城」、顔認証システム応用で精巧に復元へ : 読売新聞

崩落した「石垣の名城」、顔認証システム応用で精巧に復元へ

 地震や豪雨による崩落被害に備え、城の石垣を画像データとして保存する動きが広がっている。従来の修復工事は熟練石工の経験が頼りだったが、データと最新技術を活用することで、精巧な復元が可能になったという。2018年の西日本豪雨などで石垣が崩落した丸亀城(香川県丸亀市)では、「顔認証システム」を使って1万個超の石を積み直す難工事が進められている。(浦西啓介)

 丸亀城は、1660年に完成した天守(重要文化財)が、江戸時代の姿をとどめ、全国で12ある「現存天守」の一つ。4層の石垣を合わせた高さ約60メートルは日本一で、その曲線の美しさから「石垣の名城」と称されている。

 しかし、2018年7月の西日本豪雨で、南西側の「 帯曲輪おびぐるわ 石垣」が幅約30メートルにわたって崩落。同年10月には、台風による大雨で「三の丸 坤櫓ひつじさるやぐら 跡石垣」も崩れ、回収した石は計1万1746個に上った。

 城を管理する市は復旧方法を検討。崩落前の16年にドローンで撮影した石垣の写真が残されており、その画像データと回収した石を照らし合わせることにした。

 応用したのが、スマホなどで使われる「顔認証システム」だ。画像に映った石垣の凹凸が生み出す影などを基に、回収した石1個につき、一致する可能性の高い石垣の場所の候補を10か所選ぶ。上位2か所を石工が見比べて判断し、19年から2年をかけて画像が残る約4000個をほぼ特定した。

 残る約7000個は照合する写真がないなどの理由で、崩落時の散らばり方や石の形などから石工が推定した。昨年8月から積み直す工事を開始。わずかな狂いが、積み上げていくと大きな誤差になるため、石工が数ミリ単位で石の位置を調整している。

 28年3月の完成を目指しており、山梨県から参加した石工(62)は「30メートルを超える城の石垣を積み直す作業は過去に例がない。コンピューターと私たちの経験の融合で成功させたい」と意気込む。

  千田嘉博・名古屋市立大教授(城郭考古学)の話 「石垣の修復で高精細画像はデータとして有効だ。デジタル技術を応用することで、効率的に修復が行えるだけでなく、石材の形状を正確につかむことで今後の城郭研究を飛躍させる可能性もある。全国の城跡の石垣修復に広がることを期待したい」

熊本城は独自システム活用、名古屋城はドローン撮影

 16年の熊本地震で被災し、今も復旧作業が続く熊本城(熊本市)でも、鍵を握ったのが画像データだった。

 熊本大などの研究グループが独自の画像照合システムを開発し、残されていた画像データを基に、南側の飯田丸五階櫓石垣370個のうち91%にあたる337個の位置を特定した。

 一方、照合に使える高精細画像が残っていたのは一部だった。熊本城で積み直しが必要な石垣は最大約10万個に上るとされ、熊本城調査研究センターの担当者は「16年から石垣の写真撮影を計画していたが、地震が起きてしまった」と話す。

 金沢城(金沢市)では、約20年前から石垣の画像データを蓄積。昨年1月の能登半島地震では、崩落が約1000個と多くはなかったため、顔認証システムなどを使わずに位置の特定作業を進めた。石川県教委金沢城調査研究所は「被害規模が大きければ、システムを活用しただろう」とする。

 名古屋城(名古屋市)も17年度から、ドローンなどを使って石垣の写真を撮影している。熊本地震で熊本城が被災したことを受けたもので、26年度には、そのデータを整理した「石垣カルテ」を完成させる予定だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

【伝説の首都】日本最初の〝首都〟は『橿原宮』でも『藤原京』でもなかった|小名木善行

【伝説の首都】日本最初の〝首都〟は『橿原宮』でも『藤原京』でもなかった|小名木善行 youtu.be 信じていただけないとは思いますが難波宮=四国(香川県)説なるものがあります。 【日本書紀 応神紀二十二年】 夏四月に、兄媛、 大津より発船して往りぬ。天皇、高台に居しまして、 兄...