遺跡から発掘された古代の人々の骨に残るごくわずかなDNAを解読し、人類の足跡をたどる古代DNA研究。近年、科学技術の発展とともに飛躍的な進化をとげたこの研究の成果をもとに、旧石器時代から古墳時代まで、日本列島人の集団成立史をたどり、古代人の謎に迫る展覧会が、3月15日(土)から6月15日(日) まで、東京・上野の国立科学博物館で開催される。 【すべての画像を見る】海岸部の縄文人 縄文時代晩期 ほか(全16枚) アフリカで誕生し、6万年ほど前に世界展開を始めたホモ・サピエンスが日本列島に達したのはおよそ4万年前。この「最初の日本人」の実態は、化石証拠がなかったことからこれまで謎に包まれていたが、近年になって、沖縄県石垣島の白保竿根田原(しらほさおねたばる)洞穴遺跡からこの時代の人骨が次々に発見され、ゲノム解析が進められている。同展の見どころのひとつは、同館が古代ゲノム解析でノーベル賞を受賞したスバンテ・ペーボ博士のグループと共同で行っているこの白保人骨の最新の研究成果が紹介されること。この約2万7,000年前の人物の遺伝的特徴は明らかになっており、骨格から制作された復顔を見ることもできる。 ゲノム解析はまた、土器が出現したおよそ1万6,000年前に始まる縄文時代と、九州北部で水田稲作が登場した2,900年ほど前に始まる弥生時代、そしてヤマト政権が誕生する古墳時代と、それぞれの時代の人々についても様々な知見をもたらしてくれた。同展ではDNA分析の結果とともに、土偶や土器、稲作の道具、武器、埴輪といった考古資料も加え、古代の人々がどのように暮らし、どのような信仰をもっていたのか、朝鮮半島や琉球や北海道とどのような交流があったのか、縄文から弥生への文化変容の実態はどのようなものであったのか、あるいは現代日本人のDNAがほぼ出そろったのはいつ頃かなど、さまざまな角度から日本人のきた道と集団の歴史を紐解いていく。イヌやイエネコがいつ日本に渡来し、人々とどのように暮らしてきたのか、最新のDNA研究から迫るコーナーも興味深い。 同展ではまた、同館とNHKによる8K技術を利用した共同研究の成果を活かし、超高精細CG映像を駆使した展示が行われる。リアル感あふれる映像も楽しみつつ、新たに描かれつつある古代の時代像と古代人の姿にふれてみたい。 <開催概要> 特別展『古代DNA―日本人のきた道―』 会期:2025年3月15日(土)~6月15日(日) 会場:国立科学博物館
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