虎屋文庫の本が発行されました
このたび山川出版社より『和菓子を愛した人たち』を刊行しました。
平成12年(2000)より、当HPで連載してきたコラム「歴史上の人物と和菓子」をもとに100人を選び、大幅に加筆・修正したものです。
気難しそうな森鴎外が饅頭茶漬けを好んだなど、歴史上の人物の意外な一面にも触れていただけるような、百人百様の物語を収録しました。
菓子の写真も豊富に掲載したオールカラーの一冊で、全9章からなり、どこから読んでも楽しんでいただける内容となっています。
是非、ご一読下さいませ。
虎屋文庫『和菓子を愛した人たち』山川出版社
四六判 オールカラー 304頁 1,800円(+税)
【構成】
第1章 文学の名脇役
第2章 あの人の逸話
第3章 心が通う贈り物
第4章 徳川将軍をめぐる人々
第5章 江戸の楽しみ
第6章 旅で出会う
第7章 我、菓子を愛す
第8章 茶人の口福
第9章 思い出は永遠に
【購入方法】
全国の書店、インターネット書店にてご注文ください。
とらや東京ミッドタウン店でも販売しています。
※虎屋文庫での販売はございません。
紫式部と椿餅
光源氏も食したお菓子
いつのまにか見かけることの少なくなった二千円札。お持ちの方は、ぜひ改めてご覧下さい。今回ご紹介する紫式部は、このお札の片隅に描かれる麗しき女性、古典文学の傑作『源氏物語』の作者です。
紫式部が誕生したのは、今から1000年ほど前の平安時代中期。京都でみやびやかな王朝文化が花開いた頃にあたります。一条天皇の中宮彰子に仕えた紫式部は、文筆に優れ学問に秀でた才女でした。その類まれなる才能は、54帖からなる大作『源氏物語』にあますところなく発揮されています。
光源氏を中心としたこの恋愛小説は、登場人物の心理描写がすばらしく、時代を超えて人々の心をひきつけます。四季折々の自然の変化や、当時の貴族たちの優雅な生活が描かれているのも魅力といえるでしょう。
まれとはいえ、お菓子も登場するのですからおもしろいもの。遣唐使が伝えた唐菓子をはじめ、いくつかありますが、ここでとりあげたいのは椿餅。「若菜上」という帖に、若い人々が蹴鞠のあと、梨・柑橘類や椿餅などを食べる場面があります。
椿餅といえば、椿の葉の間に俵形の道明寺生地 (餡入り) をはさんだもの。2月頃の季節菓子としてよく目にしますが、すでに平安時代にあったとは驚きです。しかし当時は甘い小豆餡などはまだなく、甘味は生地に甘葛 (あまづら:つたの汁を煮詰めたもの) をいれる程度で、現在とは違う味だったと考えられます。
とはいえ、紫式部が私たち同様、椿餅を賞味していたことを想像すると、平安貴族たちの生活がより身近に感じられるのではないでしょうか。
二千円札が幻となってしまっても (?)、椿餅は末永く愛されるよう、願いたいものです。
※この連載を元にした書籍 『和菓子を愛した人たち』(山川出版社・1,800円+税)が刊行されました。是非ご一読くださいませ。(2017年6月2日)
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