2025年4月7日月曜日

石鎚山:前編 – 偲フ花

石鎚山:前編 – 偲フ花

石鎚山:前編

・・・

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すめろきの 神の命の 敷きいます 国のことごと 湯はしも さはにあれども 島山の 宜しき国と こごしかも 伊予の高嶺の いざ庭の 岡に立たして 歌思ひ こと思ほしし み湯の上の 木群を見れば 臣の木も 生ひ継ぎにけり 鳴く鳥の 声も変はらず 遠き代に 神さび行かむ いでまし処

『万葉集』322 – 山部赤人

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四国愛媛の山中に車を走らせていると、集落の細道に素朴な鳥居を見つけました。

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扁額、及び石碑には「石鎚山」(いしづちさん、いしづちやま)の文字。
目的地にはまだずいぶん離れていますが、この辺りも神域に含まれているのかもしれません。

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2021年10月初旬の朝8:00、僕は愛媛県西条市の石鎚山麓のロープウェイ「下谷駅」にやってきました。

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駐車場にキリコ号を停めると、お代は700円だと言われました、これは少々高過ぎ。この後のロープウェイ往復料金の2000円と合わせてもなかなかな出費です。
さらにリフトも利用するとなると、さらに往復600円が追加されます。ご利用の際はあらかじめご覚悟を。

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錆さびのロープウェイ入口看板横の階段を登ると、大きな天狗の面と下駄が置かれた天狗堂がありました。

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修験の世界では、日本国中の霊山には守護をする大天狗が棲まうと伝えられています。

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霊峰石鎚山に鎮座の大天狗は「法起坊」(ほうきぼう)と呼ばれ、役行者(えんのぎょうじゃ)の天狗名であるとされます。

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役行者とは役小角(えんのおづぬ)とも呼ばれ、修験の祖と伝えられます。
千三百数十年の昔、石鎚山を開山したのがこの役小角だと云うことです。

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程なくして下谷駅が見えてきました。

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朝一の便に間に合いましたが、たくさんの人がすでに列を作っていました。

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標高455mの下谷駅から、数分で一気に標高1,300mの「成就駅」へと向かいます。
このロープウェイのおかげで、険しい石鎚山も一般的に登山が可能になったそうです。

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気圧差で耳がつ~んとなります。

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標高1,300mまで来ましたが、それでも展望はこの程度。
周りの山も高すぎるのです。

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ここから標高1,982mの山頂まで目指します。つまり約700mの標高差を登っていくのです。

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まずは標高1,450mに位置する石鎚神社中宮「成就社」を目指します。
楽は金には変えられぬ。600円を犠牲にして楽々リフトを利用する気まんまんでしたが、なんと運休中。。
やむなく30分かけて山道を歩くことになります。

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すぐに建物が見えました。えっ、もう着いた?
いや、そんなはずもなく、これは四国八十八箇所霊場の第64番札所である「前神寺」(まえがみじ)の奥之院でした。

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成就社はまだこの先にあります。

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石鎚山の登山道には「旧跡三十六王子社」という石祠・石像を度々見かけます。
これは里宮本社から中宮成就社を経て奥宮頂上社へ至る往古の参道沿いに作られた36の王子社だそうです。

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そしてようやく成就社に到着。
しかしまだ旅は始まったばかりなのです。

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成就社(じょうじゅしゃ)です。

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ここは石鎚山の7合目にあたります。

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中宮・成就社創建の謂れには、次のようなものがありました。

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役小角は石鎚山登頂を目指していましたが、そのあまりの厳しさに諦めて下山しようとしていました。
すると、途中で斧を研ぐ老人に出会います。

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小角が老人を眺めていると、すっかり斧の刃は研げているのにいつまでも研ぐのを止めようとしません。
不思議に思った小角が老人に尋ねてみると、「私はこの斧を針にしようと研いでいるのです」と答えました。

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これを聞いた小角は「途中で諦めてはいけない」と悟り、修行に戻ってついに石鎚山登頂を果たします。
石鎚山を開山した小角は下山して山頂を仰ぎ、「わが願い成就せり」と言ったといい、これが成就社の名前の由来となりました。
この役小角が山頂を見返したと云われる場所にあるのが「見返遥拝殿」になります。

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へえ~、斧を針にね。。。って、んなアホな!

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ともあれ神門より石鎚山山頂に向けて進みます。

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ここから頂上までは3.6kmの登山。
一般的な人で、登頂までの時間は約3時間だと聞いています。

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だったら今のワイは2時間くらいで登っちまうんじゃね!?
そんなふうにこの時の僕は思っていました。

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これまでも数々の山を登り、長い階段を登り、僕は役小角ならぬ天狗になっていたのでした。
そのなが~いなが~い鼻っ柱をへし折られるまでに、そう時間はかからなかったのです。

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ところで僕は登山に来たはずです。
なのに成就社の神門からひたすら下りの道を歩いています。

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道を間違えたか、と不安が込み上げてきた時、石鎚神社の扁額がある鳥居に遭遇。
道は合っていたようです。

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霊峰石鎚山 遥拝の鳥居とあります。

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さらに少し下ったところに路程図がありました。
なんとここ「八丁」を谷として下って登るシステムでした。まじかー。
しかもこの後の夜明峠と山頂手前の勾配のエゲツないこと。
ちっくしょう、700m駆け上がってやるぜ!

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そう息巻く僕の前に現れたのは木の階段、

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階段、

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階段です。。エゲツな。

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とにかくどこまでも木の階段です。
僕がへばっていると、お姉さんがお先にとばかりに抜き去っていきます。チクショー!

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そして木の根道のトラップ発動!

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乳酸菌が溜まり始めたふくらはぎを、容赦無く絡めとります。

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股になった木を発見!

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岩の道があり、

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そしてまた階段、いや~っ!!

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ここで古びた案内板を見つけました。
なるほど、この辺りは前社ヶ森といい、石鎚大神の心臓にあたるのだと。
そして書いてありますね、度胸試しの鎖場、3つのことが。

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この石鎚登山の名物の一つに、断崖絶壁に掛けられた三つの鎖場があります。
下から「一の鎖」(33m)、「二の鎖」(65m)、「三の鎖」(67m)と。

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そしてさらに「一の鎖」の手前、ここ標高1,592mの前社ヶ森の岩峰にも、これら三つの鎖に挑めるかを測る「試しの鎖」(74m)があります。

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三つの鎖と試しの鎖には全て迂回路が設けてあり回避することもできますが、

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行くでしょ、男の子なら。

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うっひゃー、こわっ。。
今まで何度か鎖場には遭遇しましたが、74mの崖は伊達ではありません。

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これまじ、手か足を滑らせたら、何かが終わるやつです。

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後で聞いた話ですが、試しの鎖とありますが、4つの鎖のうちこれが一番高く、最も急勾配なのだそうです。
つまり僕は、いきなり最高難易度の攻略に挑んでしまったのです。

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しかも他の鎖は登りっきりですが、試しの鎖は登った後、鎖を降りなくてはなりません。
本当に自信がない人は、一の鎖でお試しをすることを勧められました。

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ともかくもなんとか登りきりました。

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岩場の上は人が十人も立てば密になる程度の広さです。

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石鎚山旧跡三十六王子社のひとつも建っています。

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とにかく今は360度の絶景を堪能しましょう。

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あれが目指す石鎚山山頂です。おお、紅葉しているではないか!狙い通り!

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ここでお昼しているお姉さんもいました。まだ旅は終わっていないぜ、ベイベー。

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さて降りる鎖はと、、、これ?
いやいや、

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いやいやいやいやいやいや、死んでまうやろ、これは。
む~り~と青ざめていたら、お昼のお姉さんがこっちじゃなくてあっちですよ、と教えてくれました。
ほう、助かった。

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ああこれね、これ。

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って、、、絶句。

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下りはね、足元が見えづらいんだよ。
だから足かけたつもりで、スコーンといくわけだよ。こっわ。

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鎖をよく見たら、奉納した人たちの名前が刻んでありました。
岸さん、滝本さん、あんたらとんでもないもの拵えなさったよ。

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なんとか無事着地。

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そして振り返ると先ほどまでいた岩の頂が見えました。
あんなところから降りてきたんか。頑張ったな、僕。
そして再び、僕の旅は続くのでした。俺たちの戦いはこれからだ!

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