2025年4月10日木曜日

アンドロクレスと獅子 : 作品情報・キャスト・あらすじ - 映画.com

アンドロクレスと獅子 : 作品情報・キャスト・あらすじ - 映画.com
アッティカの夜#5:14原作
アッティカの夜1月報参照

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アンドロクレスと獅子

解説

ジョージ・バーナード・ショウの戯曲の映画化で、製作はショー作品の全映画化権を持っていた故ガブリエル・パスカル(「シーザーとクレオパトラ」)。「黒騎士」のケン・イングランドと「非常線(1953)」のチェスター・アースキンが脚色し、アースキンが監督した。撮影は「大砂塵」のハリー・ストラドリング、音楽はフレデリック・ホランダーが担当。出演は「聖衣」のジーン・シモンズ、「我輩は新人生」のアラン・ヤング、「聖衣」のヴィクター・マチュア、「紅の翼(1954)」のロバート・ニュートン、モーリス・エヴァンス、エルザ・ランチェスター、レジナルド・ガーディナーなど。

1952年製作/アメリカ
原題または英題:Androcles and the Lion
配給:RKOラジオ日本支社
劇場公開日:1954年10月16日

あらすじ

紀元前161年の大ローマ帝国では、キリスト教徒への迫害虐殺がさかんに行われていた。仕立屋アンドロクレス(アラン・ヤング)は教徒狩りにあって山中へ逃げ、足にとげを刺して苦しむライオンに出会う。とげをとってやるとライオンは親しげにすり寄ってきたが、そこをローマ兵士に発見され、魔法使いとして捕らえられた。捕らえられた教徒たちは隊長(ヴィクター・マチュア)の指揮の下に、ローマへ死の行進を続けた。アンドロクレスは貴族出のラヴィニア(ジーン・シモンズ)と、列の先頭に立って進む。途中、怪力のキリスト教徒フェロヴィアス(ロバート・ニュートン)が、一行に加えられた。ローマに着いて、処刑の前夜、ラヴィニアに思いをかける隊長は彼女に改宗を勧めたが、ラヴィニアの堅い信心は揺るがなかった。処刑当日、斗技場に集まったローマ人を前にキリスト教徒たちが引き出されたが、武力を嫌う彼らは誰1人、剣をとろうとはしなかった。しかし、豪勇フェロヴィアスはただひとり戦闘意識に駆られ、たちまち7人をなぎ倒す。フェロヴィアスは殺生の悔恨に沈むが、これを見たシーザー(モーリス・エヴァンス)は新記録だと喜び、教徒全員を無罪放免する。だが、1人だけライオンの餌食に供されることになり、アンドロクレスが選ばれた。ところが、ライオンは彼にじゃれついてきた。アンドロクレスがかつて助けた、例のとげを刺したライオンだったのだ。シーザーはますます感激してアンドロクレスの控室を訪れたが、ライオンに吠えつかれて進退窮し、危うくアンドロクレスに助けられた。アンドロクレスはライオンを与えられて釈放され、フェロヴィアスはシーザーの親衛隊に加えられた。

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スタッフ・キャスト

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監督

チェスター・アースキン

脚色

チェスター・アースキン ケン・イングランド

原作

ジョージ・バーナード・ショウ

製作

ガブリエル・パスカル

撮影

ハリー・ストラドリング

美術

アルバート・ディアゴスティーノ チャールズ・エフ・パイク

音楽監督

C・バカライニコフ

音楽

フレデリック・ホランダー

録音

John Cass Clem Portman

編集

ローランド・グロス

アソシエイト・プロデューサー

ルイス・J・ラックミル

Laviniaジーン・シモンズ 

Androclesアラン・ヤング 

Captainビクター・マチュア 

Ferroviusロバート・ニュートン 

Caesarモーリス・エバンス 

Megaeraエルザ・ランチェスター 

Lentulusレジナルド・ガーディナー 

Menagerie_Keeperジーン・ロックハート 

Editorアラン・モーブレイ 

Spinthoノエル・ウィルマン 

Catoジョン・ホイト 

Centurianジム・バッカス 

Metellusローウェル・ギルモア


【戯曲】バーナード・ショー『アンドロクリーズと獅子』 : びょうびょうほえる~西村俊彦のblog
https://byoubyoubyou.livedoor.blog/archives/52437207.html

【戯曲】バーナード・ショー『アンドロクリーズと獅子』

『アンドロクリーズと獅子』
原題:Androcles and the Lion
作:バーナード・ショー
1911年

【名台詞】
「神さまとは、なんだ?」
「それがわかります時にはね、隊長、わたくしども自身が、神さまになるのでございましょうよ」

【感想】
ライオンが舞台に登場するトンデモ戯曲。
これ、上演出来るんだろうか…映画にはなってるらしいけど。
文庫には写真も出ていたのだけど、これは、本物のライオン…?

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アンドロクリーズさんとライオンの話は童話なんかにもあるそうです、
解説によると。
それをベースに、
ローマ時代の、キリスト教迫害を題材に、
弾圧され、コロッセオに放り込まれる側の視点から描かれた戯曲。
かといって悲劇的かというと、
「信仰」という土台に支えられている人々が割合明るく描かれている印象。
タイトルロールのアンドロクリーズは、最終場までさして活躍がなく、
改宗を迫るローマ側の人と、信仰を守る女性・ラヴィニアのやりとり、
屈強で戦いに強いフェロヴィアスが、
「戦わないことで信仰を守る」
というのを、いざコロッセオに放り込まれると破ってしまうとこなんかが面白い。


「賢明なる道は、古いものに対して、頑固に執着するのでもなければ、
また、新しいものに対して、あわてて、迂闊に気を取られるのでもなくて、
両方のよいところを利用するにある」
小物っぽさがあるローマ皇帝の台詞が、意外な名言だ。
ショー先生の持論だろうか?


【収録】
『アンドロクリーズと獅子』
作:バーナード・ショー
訳:市川又彦
1954年 角川文庫



【ネタバレあらすじメモ】

序幕
藪の中に、足に刺の刺さったライオンが休んでいる。
近くをアンドロクリーズとその妻ミジアラが通る。
彼らはキリスト教徒迫害中のローマ時代の人っぽい。
妻がライオンを発見し、ビビる。
夫は、自分が引き付けている隙に逃げろと言うが、
妻は失神。
アンドロクリーズは動物好きを活かしてライオンと仲良くなり、刺を抜いてやり、
一人と一匹はワルツを踊りながら去っていく。
気がついたミジアラは、
「私とは踊ったことないのに!」とキレて後を追いかける。

第一幕
ローマに通じる三つの道路の集合点。
コロッセオに連れていかれて獣の餌食になるキリスト教徒たちが集まっているが、
彼らは皆明るい。
とりわけ明るく器量の良い女・ラヴィニアが、
ローマの隊長たち相手に口喧嘩を仕掛けている。
隊長はラヴィニアを助けようと彼女に改宗を迫るが聞く耳持たず。
やがて、
アンドロクリーズ、フェロヴィアス(力持ち)、スピンソー(道化)らも連行されてくる。
ローマ兵を屈強な体でビビらせるフェロヴィアス。
やがて出発の時間に。
一行は獣の餌になるためにローマに向かう。
明るく笑いながら。


第二幕
コロッセオにおける出番待ち。
まだ改宗を迫るローマ人たちに、
道化のスピンソーはとうとう改宗を選び、部屋を出ていく。
が、たまたまいたライオンに喰われてしまう。
皇帝はフェロヴィアスを見込んで近衛隊に入るように促すが、
フェロヴィアスはそれを拒否。
やがて戦いが始まる。
アンドロクリーズは戦うのではなく獅子に食われたいと、女たちと共に残る。
隊長の、ラヴィニアへの求婚。

フェロヴィアスは武器も持たずに敵を殲滅し、
皇帝は大いに喜び、キリスト教徒がこんなに戦えるなら、
キリスト教徒を許す!と上機嫌。
フェロヴィアスの妹であるラヴィニアほか、皆が放免される。

しかし問題が。
民衆には、ライオンに人が喰われる所を見せる、と約束してあるため、
誰か一人は食わせないといけない。
と、ここで、アンドロクリーズが選ばれる。
いざコロッセオに出てみると、
ライオンは、以前森で刺を抜いてやったライオンで、
ライオンはアンドロクリーズと戯れる。
喝采。

アンドロクリーズがライオンを連れて控え室に戻ると皆はびびり、
皇帝すら腰が抜けたよう。
吠えかかるライオンに、
「皇帝は私の友達だから」と諭すアンドロクリーズ。

皇帝は、キリスト教徒たちを解放する。



304~7頁


   一四、プレイストニケスの異名をもつ博学者アピオンが、ローマで見た、と記して いる、ライオンと人が、古い交情を思い出し、再び互いを認め合ったという話 


  一 プレイストニケスと呼ばれたアピオンは、文学に通暁し、ギリシアの文物の該博な知識を有する人で あった。二 彼には、知る人ぞ知ると言われる書があり、そこには、エジプトで見聞できる、ありとあらゆ ると言ってもよい、不思議の話が収められている。三 もっとも、彼が聞いたり読んだりしたと語っているものにかぎっては、悪い癖の、博識を誇示しようとする熱意のあまり、話が饒舌にすぎるが実際、アピオンは、学識を誇示することでは、極端な自己宣伝家なのである、四 しかし、『エジプト誌』第五巻 に記している次の話は、聞いたり読んだりしたものではなく、自ら、都ローマで、自分の目で見た、と確言している話である。

 五 彼はこう語る。「大円形競技場(キルクス・マクシムス)で、実に大規模な野獣狩りの見世物が民衆に供されていた。六 たまたまローマに滞在していた私も、その見世物の観客の一人であった。七 そこには、狂暴な野獣が多数いて、野獣の大きさは群を抜き、その姿形や狂暴さは、どれも尋常ではなかった。八 しかし、他の何にも勝って、 ライオンの巨大さは驚嘆の的で、中でも一頭のライオンは他のライオンすべてを凌駕していた。九 その一頭のライオンは、身体の動きや巨大さ、辺りに響き渡る恐ろしい咆哮、盛り上がった筋肉、首周りに靡(なび)く鬣(たてがみ)で、観衆皆の心と目を一身に釘付けにしていた。一〇 獣との闘いに連れ出された他の多くの剣闘士ら に混じって、さる執政官格元老院議員の、一人の奴隷が引き出されてきた。一一 奴隷の名はアンドロクルスと言った。件のライオンは、遠くからこの奴隷を目にすると、突然、まるで驚いたかのように立ち止まり、それから、ゆっくりと、穏やかに、あたかも何かに気付いたとでも言わんばかりの態で、その男に近づ いていった。一二 それから、じゃれつく犬同然、媚びるように、そっと尻尾を振りながら、男の身体に身をすり寄せ、すでに恐怖で肝を潰している、その男の脛や手を舌で優しくぺろぺろと舐め始めたのである。 一三 人間のアンドロクルスは、これほど狂暴な獣が、そうして媚びるような仕草をしているあいだに、魂 消ていた心の落ち着きを取り戻すと、様子を見ようと、徐(おもむろ)にライオンに目をやった。一四 その時、見れば、まるで再び互いを認め合ったといった風情で、人間とライオンが、嬉しそうに、[再会を]祝い合っているかと思われたことであろう」。


(1) バーナード・ショーの戯曲『アンドロクリーズとライオン Androcles and The Lion』の原話。 ショーで言われる奴隷の名 「アンドロクリーズ Androcles」はアイリアノス(「動物の特 性について』七-四八)の伝に基づく。 


14項 304 第5巻 


 一五 これほど驚くべき出来事に、人々は興奮して大喚声を上げ、アンドロクルスはガイウス・カエサル に呼び出されて、狂暴極まりないライオンが、なぜ彼一人だけを容赦したのか、訳を尋ねられた、とアピオ ンは言う。一六 その時、アンドロクルスは驚嘆すべき不思議な話を、こう語った。一七 「私の主人が、執 政官格最高指揮権をもって、属州アフリカを統治していた時、そこに同行していた私は、理不尽にも、主人 に毎日鞭打ちたれることに耐えきれず、やむなく逃亡し、その地の総督である主人から、できるだけ身の安 全な隠れ処を求めて、人気ない平原や砂漠に逃げ込み、食べ物がなければ、どうにかして命を絶とうという考えでおりました。一八 その時、激しく燃えさかる陽が頭上にかかる真昼頃、人里遠く離れ、隠れ処に格好の、とある洞穴を、私は見つけ、そこに入って、身を潜めました。一九 それからほどなくして、その同 じ洞穴に、このライオンが近づいてきたのです、足の一本はびっこを引き、血が流れて、傷の痛みと苦しみを訴えるような呻きと唸り声を発しておりました」。 二〇 洞穴に近づいてくるライオンが最初に目に入った 時には、確かに、恐怖し、心は怯えた、と彼は語っている。ニー 「しかし、ライオンが、状況から明らかな ように、自分のものである、その住処に入ってきたあと、距離を置いて、身を潜めている私に気付くと、穏 やかに、人なつっこい様子で近づいてきて、足を上げ、それを私のほうに差し出して、まるで助けを求めて いるかのようなそぶりを見せたのです。二二 そこで、私は、足裏に刺さっていた大きな、木の刺を抜いて やり、傷深くにたまった膿を絞り出して、もはや大きな恐れを抱くこともなく、丁寧に傷口の血をすっかり拭ってやったのです。二三 すると、私のその尽力と治療で傷の痛みが和らいだのか、ライオンは傷ついた 足を私の手の上に置いたまま、横たわって、眠りに就きました。二四 その日以来、丸三年のあいだ、私と ライオンは、その同じ洞穴で、同じ食べ物を共にして暮らしたのです。二五 といいますのも、狩りをして 獣を仕留めると、脂ののった獲物の四肢を洞穴の私の所にまで、ライオンが運んでくれたからです。その肉 を、私は、火を熾す術がなかったものですから、真昼の日差しで焼いて、食べたものでした。二六 しかし、 そんな、獣のような暮らしがもう嫌になり、ある日、ライオンが狩りに出かけていったおりに、私は洞穴を あとにして、ほぼ三日間、道を辿っていく内に、兵士らに見つかり、捕らえられて、アフリカからローマの 主人のもとに連れ戻されたのです。二七 主人は、ただちに、私を極刑で罰しようと、野獣の相手になるよ う手配したという次第です。二八 私には分かります、このライオンも、私と離ればなれになったあと、捕らえられたものでしょうが、今、私に、あの時の親切と治療の恩返しをしてくれているのだ、と」。

 二九 アピオンが伝える、アンドロクルスの語った言葉は以上のようなものである。アピオンに拠れば、この話は、すべて記録され、記録された書板は国民の間に周知されて、その結果、国民全員の嘆願によって、 アンドロクルスは[奴隷身分から] 解放され、罰を免除された上に、国民投票によって件のライオンを与え られたという。三〇「その後」とアピオンは続ける、「アンドロクルスと、細い紐に繋がれたライオンは、 ローマの都中を、店から店へと連れだって歩き回り、アンドロクルスには金が贈られ、ライオンには花吹雪が浴びせかけられて、出会った人々が、至る所で、口々に、こう語る姿が見かけられた、「これが人間の賓客のライオンだ。この人がライオンの医者だ』と」。


(1)三〇三頁註 (3) 参照。 


307 

第 5 巻 14項 306



(3) hospes. 国際法のなかった古典古代、善良な客人 (異国人)を厚遇することの重要性から、ローマでは「ホスピティウムhospitium」(ギリシアでは「クセニアーξενία」)と呼ばれる社会慣習が生まれた。互いに歓待しあう、一種の約束を交わした間柄の相手のこと。個人的なもののほかにも、公的なものもあった。



一四、プレイストニケスの異名をもつ博学者アピオンが、ローマで見た、と記して いる、ライオンと人が、古い交情を思い出し、再び互いを認め合ったという話
  プレイストニケスと呼ばれたアピオンは、文学に通暁し、ギリシアの文物の該博な知識を有する人で あった。二 彼には、知る人ぞ知ると言われる書があり、そこには、エジプトで見聞できる、ありとあらゆ ると言ってもよい、不思議の話が収められている。三もっとも、彼が聞いたり読んだりしたと語っている ものにかぎっては、悪い癖の、博識を誇示しようとする熱意のあまり、話が饒舌にすぎるが実際、アピ オンは、学識を誇示することでは、極端な自己宣伝家なのである、四 しかし、「エジプト誌』第五巻 に記している次の話は、聞いたり読んだりしたものではなく、自ら、都ローマで、自分の目で見た、と確言
キルクス・ クシムス
五彼はこう語る。「大円形競技場で、実に大規模な野獣狩りの見世物が民衆に供されていた。六たま たまローマに滞在していた私も、その見世物の観客の一人であった。七 そこには、狂暴な野獣が多数いて、
ほうこう
野獣の大きさは群を抜き、その姿形や狂暴さは、どれも尋常ではなかった。八 しかし、他の何にも勝って、 ライオンの巨大さは驚嘆の的で、中でも一頭のライオンは他のライオンすべてを凌駕していた。九 その一 頭のライオンは、身体の動きや巨大さ、辺りに響き渡る恐ろしい咆哮、盛り上がった筋肉、首周りに靡く 鬣で、観衆皆の心と目を一身に釘付けにしていた。一〇 獣との闘いに連れ出された他の多くの剣闘士ら に混じって、さる執政官格元老院議員の、一人の奴隷が引き出されてきた。- 奴隷の名はアンドロクル スと言った。件のライオンは、遠くからこの奴隷を目にすると、突然、まるで驚いたかのように立ち止ま り、それから、ゆっくりと、穏やかに、あたかも何かに気付いたとでも言わんばかりの態で、その男に近づ いていった。それから、じゃれつく犬同然、媚びるように、そっと尻尾を振りながら、男の身体に身 をすり寄せ、すでに恐怖で肝を潰している、その男の脛や手を舌で優しくぺろぺろと舐め始めたのである。 一三 人間のアンドロクルスは、これほど狂暴な獣が、そうして媚びるような仕草をしているあいだに、魂 消ていた心の落ち着きを取り戻すと、様子を見ようと、徐にライオンに目をやった。一四 その時、見れ
すね
おもむろ
ば、まるで再び互いを認め合ったといった風情で、人間とライオンが、嬉しそうに、[再会を]祝い合ってい るかと思われたことであろう」。
一五 これほど驚くべき出来事に、人々は興奮して大喚声を上げ、アンドロクルスはガイウス・カエサル
(1) バーナード・ショーの戯曲『アンドロクリーズとライオン Androcles and The Lion』の原話。 ショーで言われる奴隷の名 「アンドロクリーズ Androcles」はアイリアノス(「動物の特 性について』七-四八)の伝に基づく。
まさ 14項 304 第5巻 きゃく(1) (1)三〇三頁註 (3) 参照。 ほらあな
おこ すべ
に呼び出されて、狂暴極まりないライオンが、なぜ彼一人だけを容赦したのか、訳を尋ねられた、とアピオ ンは言う。一六 その時、アンドロクルスは驚嘆すべき不思議な話を、こう語った。一七 「私の主人が、執 政官格最高指揮権をもって、属州アフリカを統治していた時、そこに同行していた私は、理不尽にも、主人 に毎日鞭打ちたれることに耐えきれず、やむなく逃亡し、その地の総督である主人から、できるだけ身の安 全な隠れ処を求めて、人気ない平原や砂漠に逃げ込み、食べ物がなければ、どうにかして命を絶とうという
ひとけ
考えでおりました。一八 その時、激しく燃えさかる陽が頭上にかかる真昼頃、人里遠く離れ、隠れ処に格
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好の、とある洞穴を、私は見つけ、そこに入って、身を潜めました。一九 それからほどなくして、その同 じ洞穴に、このライオンが近づいてきたのです、足の一本はびっこを引き、血が流れて、傷の痛みと苦しみ を訴えるような呻きと唸り声を発しておりました」。 二〇 洞穴に近づいてくるライオンが最初に目に入った 時には、確かに、恐怖し、心は怯えた、と彼は語っている。ニー 「しかし、ライオンが、状況から明らかな ように、自分のものである、その住処に入ってきたあと、距離を置いて、身を潜めている私に気付くと、穏 やかに、人なつっこい様子で近づいてきて、足を上げ、それを私のほうに差し出して、まるで助けを求めて いるかのようなそぶりを見せたのです。三 そこで、私は、足裏に刺さっていた大きな、木の刺を抜いて やり、傷深くにたまった膿を絞り出して、もはや大きな恐れを抱くこともなく、丁寧に傷口の血をすっかり 拭ってやったのです。二三 すると、私のその尽力と治療で傷の痛みが和らいだのか、ライオンは傷ついた 足を私の手の上に置いたまま、横たわって、眠りに就きました。二四 その日以来、丸三年のあいだ、私と ライオンは、その同じ洞穴で、同じ食べ物を共にして暮らしたのです。二五 といいますのも、狩りをして 獣を仕留めると、脂ののった獲物の四肢を洞穴の私の所にまで、ライオンが運んでくれたからです。その肉 を、私は、火を熾す術がなかったものですから、真昼の日差しで焼いて、食べたものでした。二六 しかし、 そんな、獣のような暮らしがもう嫌になり、ある日、ライオンが狩りに出かけていったおりに、私は洞穴を あとにして、ほぼ三日間、道を辿っていく内に、兵士らに見つかり、捕らえられて、アフリカからローマの 主人のもとに連れ戻されたのです。二七 主人は、ただちに、私を極刑で罰しようと、野獣の相手になるよ う手配したという次第です。二八 私には分かります、このライオンも、私と離ればなれになったあと、捕 らえられたものでしょうが、今、私に、あの時の親切と治療の恩返しをしてくれているのだ、と」。
二九 アピオンが伝える、アンドロクルスの語った言葉は以上のようなものである。アピオンに拠れば、 しょぼん この話は、すべて記録され、記録された書板は国民の間に周知されて、その結果、国民全員の嘆願によって、 アンドロクルスは[奴隷身分から] 解放され、罰を免除された上に、国民投票によって件のライオンを与え られたという。三〇「その後」とアピオンは続ける、「アンドロクルスと、細い紐に繋がれたライオンは、 ローマの都中を、店から店へと連れだって歩き回り、アンドロクルスには金が贈られ、ライオンには花吹雪 かね
が浴びせかけられて、出会った人々が、至る所で、口々に、こう語る姿が見かけられた、「これが人間の賓 客のライオンだ。この人がライオンの医者だ』と」。
とげ 307 第 5 巻 14項 306

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