伝説の書『丸石神 庶民のなかに生きる神のかたち』(1980年/木耳社)を再編集し、中沢新一の書き下ろし論考「『丸石神』の残したもの」を増補した新装決定版。
山梨県をはじめ九州、四国、南紀には、大小あわせて数千にあまる自然石の丸石が道祖神や屋敷神としてさりげなく祀られ、まろやかな調和のうちに太古のまどろみを続けています。なぜ丸石を神として祀るのか、日本人の神観念や美の感覚とそれはどう関わっているのか、今もなお生活の場に生きつづける丸石神は、人々の日々の営みとどのようにわたりあい、どのような過去をたどってきたのか。そもそもいかにして丸石は形成されたのだろうか……。1970年代、丸石神をめぐるさまざまな謎を研究する民俗学者や美術家たちの集団がありました。本書は、その丸石神調査グループによるユニークな知的冒険の記録であり、中沢新一が「私の原点」と語る貴重な書籍の増補新版です。
当時の雰囲気をそのまま再現した色彩の美しいカラー写真と、ダブルトーン印刷で表現したモノクローム写真をグラビアページに129点収録。本文中には資料的価値の高い図版を100点以上掲載。巻末には調査グループのメンバーを集合写真にて紹介し、引用の出典元を主要参考文献としてまとめました。
5つ星のうち5.0 さやります卵形の神々2026年3月14日に日本でレビュー済み
中沢新一の父・中沢厚は、武田久吉に師事する在野の民俗学者。厚の著書『山梨県の道祖神』に紹介されていた丸石神に着目したのが、幅広い現代美術批評を展開していた石子順造。石子は芸術家の仲間たちと厚の元を訪ねる、そんな邂逅からはじまる元本を約半世紀ぶりに復刊。ありがたい。
古より路傍にたたずむ道祖神がなぜ丸い石なのか。人はなぜ丸石に惹かれるのか。古とはいつの時代のことか。いかにして石は丸くなったのか。海を持たない山梨県の丸石と全国に点在するそれとの一致と相違。丸石神をこれほど多角的に論じた本をほかに知らない。コマーシャルフォト業界で活躍する遠山孝之の写真は美しいし、新一が復刊のために書き下ろした論考と、二十代半ばだった当時の文章を読み比べるのもたのしい。
丸石神にはロマンがある。諸星大二郎の作品テーマとなり、最近ではダンダダン、呪術廻戦、地獄楽ほか多くの人気マンガのなかに見え隠れする丸石神。オカルトや民俗学のブーム再燃を横目に、今日も私たちの暮らしを静かに見守っている。

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