柿本(ノ)人麻呂、岩見の國で今死なうといふ時、自ら悲しんで作つた歌
223 鴨山の岩ねし枕ける我をかも、知らにと妹が待ちつゝあらむ
223 鴨山の岩を枕として寢てゐる自分だのに、其自分をば、いとしい人は知らないでゐて、歸りを待つてゐることだらうよ。(當時、人麻呂の本妻は、大和にゐたのである。)
柿本(ノ)人麻呂の死んだ時、其妻依羅郎女(ヨサミノイラツメ)の作つた歌
224 今日々々(ケフ/\)と我が待つ君は、石川の峽に交りてありといはずやも
224 今日歸るか、今日歸るか、と毎日わたしが待つてゐた人は、石川の谷間に紛れこんでゐるといふことではないか。あゝ無駄に逢ふ日を待つてゐたことだ。
225 直の逢ひは逢ひがてざらむ。石川に雲立ち渡れ。見つゝ偲ばむ
225 死んだ人は、なる程直接の面會には、逢ふことは出來ないだらうが、石川の邊に雲がずつと立つてかゝつてくれ。それを夫のかたみと見て、慕うて居よう。
丹比某が、人麻呂の心持ちで答へた歌
226 荒浪により來る玉を枕に置き、我ここにありと、誰か告げなむ
226 荒浪におし流されて依つて來る、玉を枕下に置いて、私が死んで此處にゐる、と誰も家人に知らせてくれる者がなからう。





























































































































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