重要文化財|十王図|奈良国立博物館
十王は人が死後に行くという冥界(めいかい)にいる十人の王。そこで死者は生前の行いを王に裁かれ、次に生まれ変わる世界が決定される。現在三幅で伝わるこの十王図は、もとは十幅セット(あるいは地蔵(じぞう)を加えた十一幅セット)であったうちの三幅と考えられる。陸信忠(りくしんちゅう)の十王図と比較すると、地獄で責め苦を受ける罪人の様子が、下方に大きくスペースを取って独立して大きく描かれているのに特色がある。五道転輪王(ごどうてんりんおう)では、親族の祈祷(きとう)や布施(ふせ)などによってか、地獄から放たれる罪人の姿が描かれる。
陸仲淵(ちゅうえん)は陸信忠と同じく中国・寧波(ニンポー)(浙江省)の市井で活動した仏画師と考えられ、画風も共通が認められる。近代には森村男爵家に伝来していた。
(北澤菜月)
奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション―. 奈良国立博物館. 2021.7, p.268, no.158.
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