2025年10月25日土曜日

蜂須賀家政 一五九六年十二月十三日付、長崎発信、ルイス・フロイス師の、一五九六年度・年報









1596年度年
一五九六年十二月十三日付、長崎発信、ルイス・フロイス師の、一五九六年度・年報

 或る領国(阿波国)の別な国主(蜂須賀家政)は、すでに洗礼を受ける覚悟でこう言った。自分の領地や生命を
失っても、その時にはキリシタン信仰を捨てない固い決心をもってキリシタンになる、と。彼は自分がキリシタンに
なったことを、異教徒の殿たちに気付かれぬよう十分に注意を払っていたが、我らの法についての熱意に燃え、それ
について大いなる感情を込めて語り、機会があると我らのことについて話さないでいることはできぬほどである。つ
まり彼は、日本人の考えとは違って世界が球状であること、天体の運行のこと、日月蝕のこと、その他の天文学上の
不思議な諸問題について議論し、更にこれらの長く続いた議論によって、ついには宇宙の創造主と支配のこと、我ら
と同じく死すべき人間であった神と仏のことについて議論した。そしてついに彼は、こう結論した。おお、日本人た
ちは救済の道から、いかに遠のいていることだろうと。
240頁

一九八七年九月二五日 初版第一刷発行
十六・七世紀イエズス会日本報告集
第1期第2巻(全五巻)

これらの対話によって一同は、少なくとも彼がキリシタン宗門に対する好意を退けていないと理解したものと言い
得る。彼がキリシタンになる少し前に、娘は(前田) 玄以法印のキリシタンである長男 (前田茂勝)と結婚した。彼
女は以前はキリシタンの法を知っていなかったが、夫が洗礼を授かって以後は、彼女も同様な心を抱き始めたので、
彼女も間もなくキリシタンになるため受洗するであろうと思われる。
信濃の国において米二十四万俵の俸禄を得ている(京極) ジョアン修理 (高知) 殿が改宗したことについては先に
述べた。彼の両親はキリシタンであり、また太閤の奥方の従兄姉である。彼は今なお(都の)政庁に住んでいる母親
と、亡くなった父親の模範によって受洗した。非常に敬虔な人であった父親から遺された聖遺物、ロザリオ、贖いの
小球、聖画像を、非常に大切に保存している。彼が非常に望んでいた洗礼を授かった時にどんなに喜んだかは言葉に
表わせぬほどで、彼は次のように約束した。自分はただちに家臣たちのもとで彼らが福音を傾聴するようにしよう、
と。絶えず彼の側にいる重立った者たちは、すでに(福音を聞いて更に洗礼さえ授かっている。

彼の母親は息子が受

監訳
松田 毅一 (まつだ きいち)
1921年, 香川県生まれ。 上智大学文学部卒。文学博士。 現, 京都外国語大学(大
学院)教授。 著書 『南蛮史料の研究』, 訳書『フロイス日本史』(共訳)他。
協力
E. ヨリッセン (Engelbert Jorissen)
1956年, 西ドイツ生まれ。ケルン大学文学部卒。 Dr. ケルン大学専任講師を経
現,京都外国語大学非常勤講師。 著書 『カルレッティ氏の東洋見聞録』 他。
翻訳
家入 敏光 (いえいり としみつ)
1925年, 熊本県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退, 文学修士。
現, 天理大学教授。 著書 『初期キリスト教ラテン詩史研究』 訳書 『オドリコ
東洋旅行記』他。
一九八七年九月二五日 初版第一刷発行
十六・七世紀イエズス会日本報告集
第1期第2巻(全五巻)
発監
今松
発行所
定価 四八〇〇円
製本 大日本製本紙工株式会社
印刷株式会社図書印刷同朋舎
電話 (〇三)二三四四九八二
三―七一二清話会ビル五階
東京支店/東京都千代田区三崎町
振替 京都五二二九八二
電話 (〇七五三四三〇六二
〒00京都市下京区中堂寺鍵田町二
株式会社同朋舎出版
1
ISBN4-8104-0597-4 C3316 ¥4800E

1596年度年
一五九六年十二月十三日付、長崎発信、ルイス・フロイス師の、一五九六年度・年報


迫害中におけるイエズス会の司祭たちの活動状況について
昨年一五九五年に当地から書かれた書簡が、至高至善なるデウスの御好意によって、無事に総長猊下のもとに届け
られたのであれば、それによって日本人たちのもとでのキリシタンの事情をすなわちあるいは諸々の霊魂の霊的
な効果を、意見と希望に唸りあるものとして、あるいはこの異教徒たちのもとでのカトリックの信仰が、日一日と評
判を一段と高めていることを明らかに認めることができたであろう。
同書においては、世俗的な国家の改革と変化について、また全領国の全体的な支配について、また特にいとも高
貴な国主たちのいたましい殺害について、 その他主としてこの土地の気候が災いしたと思われる諸天変地異について
書き記した。しかしその後、日本国の専制主太閤様は、その統治における熱心さと知恵によって、すべての混乱と騒
を収拾したので、すべてが以前のような平和と平穏さをまたたく間に取り戻したようである。
それゆえデウスの意向が注がれているとはいえ、我らは日本の貴人たちの心に、福音の教えについて、またその

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