2025年10月25日土曜日

マテオリッチ 天主実義





61 第二篇 天主に関する・・・ あき 日ではそうではありません。これによって、太極についての解釈が正しくないことが分かり ます。先生は、このことについて非常に詳しく説明をされました。 [それは] 古代の聖人や 賢人と何ら異なる考えではありません」と。

 26 西士が言った、「しかし、天地を尊ぶという考え方も、納得しにくいものがあります。 そもそも最も尊いものは唯だ一つで、二つとはないものです。天と言い地と言うと、これは 二つのものです。 我々の国で言う天主とは中国語の上帝であり、土で造る玄帝や玉皇といっ た道教の像とは異なるものです。 それらは、武当山に棲んで修業をした者にすぎず、人にほ かなりません。どうして人が天の帝や皇となることができましょう。我々の天主は、[中国] 古代の経書で上帝と呼ばれているものです。 「中庸』では、「郊社の祭礼は上帝に仕えるため のものである」という孔子の言葉を引用しており、朱子の注釈には「后土に仕えると言って いないのは、文章を省略したものだ」とあります。 [しかし] よく考えてみますに、孔子は [仕えるべきものは]一つであって二つではないということを明らかにしたのであって、文 章を省略したというものではありません。


天主実義 上巻 70
る。
原文に「周子」とあるのは、北宋の周敦頤(一〇一七~七三)のこと。字は茂叔、号は濂渓。
「太極図」「太極図説」『通書』等を著した。周子は「太極」を万物の根源であるとしたが、理
に関しては直接言及してはいない。ここは、太極を理と解釈する朱子の説を踏まえている。
(2)「太極図」 「太極図説」によれば、太極 (無極) 陰陽五行 乾道坤道一万物化生という生
成論的、ないしは存在論的構造がある。
(2)「太極図説」によれば、 太極の活動状態が陽で、静止状態が陰であり、陰陽が交錯して木火
水金土の五行を生じる。
(2) 朱子は「太極図説解」の中で、「太極は形而上の道なり」と述べている。 朱子によれば、物
を形成するものは陰陽の気(形而下の器)であり、形而上の道である理が物の本質をなす。
(2) 原文には「霊覚」とある。動物一般が有する単なる「知覚」ではなく、霊妙な知覚を指す
霊魂の属性と解することができる。
(2) ここで言う「鬼神」は、カトリックで説く「天使」の意味に近いと言える。明末天主教にお
いては、「天神」(天使)と「魔鬼」(悪魔)をあわせて「鬼神」と表現する場合がある。
(3)『論語』衛霊公篇に、「子曰く、人能く道を弘む。道の人を弘むるには非ず、と」とある。
ひろ
(3) 本篇の注3を参照。『易経』 繫辞伝は、 十翼の一つで、孔子の作と伝えられる。
まつ
(32)「郊社の礼」とは、天子が冬至の日に天を、夏至の日に地をまつる祀りのこと。本篇の2
で西士が引用するように、『中庸』第十九章に、「郊社の礼は、上帝に事うる所以なり」とあ
つか

 () [『詩経』]周頌[執競篇]には、「自強の道を執り守られた武王、その功業は強きもの。成 王と康王の徳が顕らかにされ、上帝はこれを君主とされた」とあります。 また「『詩経』周頌臣工篇には]、 「ああ見事な小麦と大麦、大いに[上帝の]明徳の賜物 (3)
 71 第二篇 天主に関する・・・
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(33)「玄帝」「玉皇」は共に天帝のこと。 玉帝、玉皇大帝、元始天尊とも言う。
(34) 本篇の注3を参照。 孔子の言葉として見える。
(35) 朱子は『中庸章句』第十九章の注の中で、「郊は天を祭るなり。社は地を祭るなり。后土を
言わざるは、文を省くなり」と解釈している。后土とは大地の神で、皇天(上帝)に対する。
(36) 『詩経』周頌執競篇に、「競きを執る武王、競きこと無からんや維の烈。顕らかならざるや成
きみ
上帝、是れを皇とす」とある
ああおお
つよ
むぎ おおむぎ おお
あき
あき
(3)『詩経』周頌臣工篇に、「於皇いなるかな來と牟、将いに厥の明を受く。明、上帝に昭らかな
り」とある。
つつし
(3)『詩経』商頌長発篇に、「聖敬、日に躋り、昭仮、遅遅たり。上帝を是れ祗む」 とある。
ここ
あき
つか
(3)『詩経』大雅大明篇に、「維れ此に文王、小心翼翼として、昭らかに上帝に事う」とある。
(4)『易経』説卦伝に、「帝は震に出づ」 とある。
つぶさ
4)『礼記』月令篇に、「五者備に当たれば、上帝其れ饗く」とある。
みずか
せいきよちよう
(4)『礼記』表記篇に、「天子親ら耕す。粢盛秬鬯、以て上帝に事う」とある。
みち やす
『書経』湯誓篇に、「夏氏に罪有り。予は上帝を畏れ、敢えて正さずんばあらざるなり」とあ
まこと
つね
したが
4)『書経』湯誥篇に、「惟れ皇いなるかな上帝、衷を下民に降す。恒有るの性に若い、克く厥の
きみ
猷を綏んぜしむ。惟れ后なり」とある。
なん
『書経』金縢篇に、「乃、帝の庭に命じ、四方に敷佑せよ」とある。

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明末清初天主教史文獻叢編 | NDLサーチ | 国立国会図書館

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