【城びとお城部特別編】笠間城天守が一部現存していた!(国立小山工業高等専門学校専攻科 神宮暁さん)
2025/10/28
今回の「お城部」は特別編! 2025年5月、笠間稲荷神社(茨城県笠間市)において笠間城天守が一部現存していたことを報告する研究成果説明会が開催されました。説明会を主催し、現在も研究を進めている国立小山工業高等専門学校(以下、小山高専)専攻科の神宮暁(しんぐう さとし)さんに、発見に至る経緯と研究成果について、お城に興味を持ったきっかけから研究の最新情報までと合わせて紹介していただきます。
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【城びとお城部発足!】お城や歴史を研究している小・中・高・大学生グループの活動を紹介します!
城郭研究への関心と経緯
笠間城の概要
私が研究対象としているのは茨城県笠間市に存在した笠間城です。笠間城は鎌倉時代に築かれたとされ、その後蒲生氏などの手により大規模な改修が行われ、関東地方では珍しい石垣を備えた山城として知られています。現存する建築遺構としては、八幡台櫓を移築したと伝わる真浄寺七面堂や、城門を移築した建物などが確認されており、いずれも貴重な文化財として保存されています。

佐白山の山頂に鎮座する佐志能神社拝殿。笠間城天守の旧材を用いたとされる
私は笠間城の研究において、天守曲輪跡に建つ佐志能(さしのう)神社拝殿に注目しました。この場所は、かつて天守が建っていた佐白山の頂上に位置しており、明治時代に天守の旧材を用いて建てられたとされています。しかし、これまで実際に調査が行われたことはなく、どの程度旧材が使われたのかは不明のままでした。

佐志能神社拝殿の内部の様子
そこで私は、拝殿の構造や部材の痕跡に注目し、実測調査(寸法測定・部材痕跡の記録・図面作成・構造形式の分析等)を通じて詳細な考察を行いました。
調査による発見と成果
調査の結果、佐志能神社拝殿は、笠間城天守1階のおよそ半分を利用しており、その空間はほぼ当時のままの状態で現存していることが明らかになりました。この発見により、天守1階の復原図を作成することができ、笠間城天守の実像を具体的に明らかにする大きな一歩となりました。
現在は、2階部分の復原図や立面図の作成、3DCGによる再現を通して、天守の全体像の解明に向けて研究を続けています。

笠間城天守:復原平面図

笠間城天守復元CG(外観)

笠間城天守復元CG(内観)
今後の展望
笠間城跡では現在、笠間市によって国史跡指定を目指す調査が進められており、学術的な注目が高まっています。私の研究も今後の整備や史跡指定の検討に役立つ可能性があり、その責任の重さを感じながら日々研究に取り組んでいます。
一方で、課題も少なくありません。現存する12の天守はすべて国宝または国の重要文化財に指定されていますが、笠間城天守は一部現存であるため、「現存天守」として広く認知されるとは限りません。また、笠間城跡は東日本大震災の影響で石垣が崩落するなどの被害を受け、現在も復旧が十分に進んでいません。城跡内の佐志能神社も例外ではなく、社殿は徐々に崩壊が進行しており、2025年10月現在も周辺は立入禁止となっています。早急な修復と保存が求められる一方、文化財指定がないために資金確保も難しく、今後も学術的検証を通じて佐志能神社拝殿の歴史的価値をさらに明確にしていく必要があります。

東日本大震災以降、崩壊が進む佐志能神社
こうした状況を踏まえ、私は今後も遺構の調査・分析を通じて、史実に基づく笠間城天守の姿を明らかにしていきたいと考えています。いつか自分の目でその姿を確かめられる日を願いながら、研究を進めていきたいと思います。また、笠間城天守の歴史的価値と魅力を、より多くの人々に伝えていけるよう、今後も様々なイベントも実施したいと考えております(直近では2025年11月1日・2日の小山高専学園祭で復元CGなどの展示会を予定)。今後の研究成果にもぜひご注目ください。
本研究の詳細については、以下のリンク先をご覧ください。
※論文は2026年3月に公開予定です。
執筆・写真/神宮暁さん(国立小山工業高等専門学校専攻科 複合工学専攻 建築学コース2年)
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