「蝦夷というキーワードについて」
先日、Xで蘇我蝦夷という名前の〝蝦夷〟というキーワードについてポストした結果、想像以上に沢山の人の目に触れ、様々なツッコミがあったので詳しく補足しますね。
まず、エミシについて記述した最古の文献が中国南朝の宋で作られた「宋書」です。これは西暦502年に完成した書物なので、西暦700年代に作られた古事記や日本書紀より遥かに古い書物となります。
この宋書「倭国伝」の中には、5世紀に存在した倭王武(倭の五王の1人)が使者を通じて宋へ手紙を送っていたことが記録されています。
その中で「エミシ」について触れられており、
「我々の祖先は、山を越え川を渡り、休む暇がないほど各地で戦ってきました。東では毛人(東方の異民族)の国を55国征服し、西では衆夷(西方の異民族)を66国征服し、海をわたって朝鮮半島の95国を平定しました。」
このように書かれているんです。この頃は蝦夷ではなく、毛人と書かれているのが特徴です。魏志倭人伝(魏書)に登場する日本の国が30個近くであることを考えると、毛人と衆夷の国を合わせて121個もあるのは相当すごい。
ちょっと盛ってるんじゃないか?と疑いたくなるような数字ですが、これが事実だとすると、〝当時の大和朝廷から見て〟多くの日本人が毛人か衆夷に属していたとも考えられますよね。
仮に倭王武が日本に住む大多数の人を「毛人」とか「衆夷」と呼んでいたとすれば、倭王武自体が弥生時代(〜西暦250年)か古墳時代(西暦250〜538年頃)に日本にやって来た渡来系勢力だった可能性もありえます。
宋に手紙を送った倭王武は、一般的な学説では「雄略天皇」だと考えられているんですが、この数代後の武烈天皇の時代に権力争いで一族が殺害されまくった結果「皇位を継ぐことが出来る直系の男子がいなくなる」という異常事態が勃発。
その後、豪族同士で会議が行われ、滋賀県(近江)にいた遠い親戚の男大迹王(おおどのおおきみ)が第26代「継体天皇」に選ばれたのです。
ちなみに、この毛人という言葉の由来は諸説あり、
①体毛が濃い人。後のアイヌ人との関連性も指摘
②髭が長い人。または髪を結わずに伸ばす風習を指したという説。マサキの異称
こんな風に言われています。
その後、西暦587年に仏教を日本で広めたい蘇我氏vs神道系保守派の物部氏の戦いが勃発。この戦争に勝利した蘇我氏は調子に乗りまくっていくのですが、蘇我馬子は一つ歴史に残るレベルの事件を起こしているんです。
それが、〝崇峻天皇の暗殺〟なんですね。
日本の歴史の中で唯一「天皇を暗殺した男」が蘇我馬子ということになるんですが、それだけのことをしても何のお咎めも受けていないという凄まじい権力を持っていました。
この頃の蘇我氏は天皇以上の力を持つようになり、息子の蘇我蝦夷、孫の蘇我入鹿の時代になると、天皇と同格のように振る舞っていたと記録されているのですが、一説には同格どころか「実際に蘇我氏が大王だったのではないか?」という風にも考えられています。
その後、蘇我蝦夷と蘇我入鹿は、中大兄皇子と中臣鎌足によって暗殺され、西暦645年(最近は646年)の大化の改新へと繋がっていくのですが、興味深いのはそのすぐ後の西暦659年に行われた第4次遣唐使が派遣された際に、わざわざ「エミシ」を同行させているところなんです。
この時、日本の記録の中でも、中国の歴史の中でも「毛人」ではなく、初めて「蝦夷」という漢字が使われているのも重要ポイントです。
中国において古くから「夷」は未開の異民族を表す言葉であり、異民族を表す漢字には、意図的に「蝦」みたいな虫偏とか獣偏を使う傾向がありました。
なので、毛人→蝦夷の表記の変化は、より明確な蔑視意識が働いたと考えられるのです。つまり、同じエミシでも「毛人」と「蝦夷」では意味が全然変わってくるんですね。
何より、大規模な政権交代が起こった大化の改新のすぐ後に「中国に見せつけるように」蝦夷を連れていき、紹介しているのも意味深です。
実は、この頃の日本は中国に対して「日本人とは」というのをアピールする必要があったのですが、詳しくはこちらの動画で解説しているので見てください↓
youtu.be/QW_aDR1V3A0?si…
日本の歴史の中で、エミシを名乗った貴族は、
・蘇我蝦夷(〜645)
・小野毛人(〜677)
・佐伯今毛人(さえきのいまえみし)奈良時代
・佐伯毛人(さえきのえみし)奈良時代
・鴨蝦夷(かものえみし)672年の壬申の乱で活躍
この5人になりますが、蘇我蝦夷と鴨蝦夷以外は「毛人」という漢字を使っています。これは、「強い男」という意味合いを持つエミシという言葉に憧れたという説が当てはまりますが、小野毛人に関しては海洋系「和邇氏」の一族なので、彼自身が毛人というアイデンティティを持っていた可能性も考えられます。
②に続く
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