いただきます、ごちそうさまの本来の言葉
2025年08月21日
食事の前に — 「いただきます」の意味
日本では食事の前に「いただきます」と言います。この言葉には、単なる挨拶以上の深い意味が込められています。
神社の伝統では、食前に「食前感謝詞(しょくぜんかんしゃのことば)」を唱える習わしがあります。
まず、先導役が「静座、一拝一拍手」と告げ、全員で一拝一拍手をします。次に、先導役が節をつけて「たなつもの」と唱え、それを合図に全員で和歌を詠みます。
「たなつもの 百(もも)の木草(きぐさ)も 天照(あまてら)す 日の大神の めぐみえてこそ」
そして一同で「いただきます」と唱え、食事を始めます。
この和歌では、五穀やあらゆる作物は、天照大御神の御恵みによって育まれるものであり、人の力だけで得られるものではありません。だからこそ、毎日の食事のたびに神の恵みを思い起こすことが大切だと説いています。
食事の後に — 「ごちそうさま」の意味
食後には「ごちそうさま」と言います。この言葉も、単に食べ終わった合図ではなく、食べ物と恵みに感謝する祈りの言葉です。
伝統的には「食後感謝詞(しょくごかんしゃのことば)」が唱えられます。
先導役が「端座、一拝一拍手」と告げて一同で礼をし、先導役が「朝よいに」と節をつけて唱えます。これを合図に、全員で和歌を詠みます。
「たなつもの 百(もも)の木草(きぐさ)も 天照(あまてら)す 日の大神の めぐみえてこそ」
「朝よひに 物くふごとに 豊受(とようけ)の 神のめぐみを 思へ世の人」
本居宣長と『玉鉾百首』
その後、全員で「ごちそうさまでした」と声を揃え、食事を終えます。
この和歌には、食事のたびに、食物を司る豊受大御神の御恵みに感謝しなさい、という意味が込められています。
本居宣長と『玉鉾百首』
ここで詠まれる二首の和歌は、江戸時代の国学者・本居宣長が著した短歌集『玉鉾百首(たまぼこひゃくしゅ)』に収められたものです。
今日でも神社関係の研修会では、食事の際にこの作法が守られており、食事を前に「いただきます」、食事を終えて「ごちそうさま」と感謝を捧げる伝統が受け継がれています。
感謝の心を受け継ぐために
現代は一年を通して食材が手に入る便利な時代ですが、食べ物は決して人間の力だけで生まれるものではありません。自然の恵み、神の加護、多くの人々の労によって私たちの食卓は成り立っています。
「いただきます」「ごちそうさま」という言葉は、そうした恵みへの感謝を表す大切な言葉です。和歌を唱えるかどうかにかかわらず、感謝の心を忘れずに食事をいただくことこそ、先人から受け継ぐべき精神なのです。

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